SONGOの実演
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SONGOの概要
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携帯電話機がContrail用のフィルターを受け取る様子
携帯電話機がContrail用のフィルターを受け取る様子
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Contrailの概要
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Contrailの技術概要
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MAUIの概要
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MAUIのアーキテクチャ
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 米Microsoft Corp.で研究開発を手掛けるMicrosoft Research(MSR)は,2010年5月6日,同社のシリコンバレー・キャンパスで「Silicon Valley TechFair 2010」と題したイベントを開催した。このイベントの狙いは,MSRの研究開発成果をシリコンバレー地区で活動する社内や社外の人達に紹介することにある。実際,今回のイベントには,米Google Inc.,Director of ResearchのPeter Norvig氏も参加していた。今回のイベントでMSRは,データ・センターやプライバシー,インターネット検索などの分野で,合計22個の研究開発プロジェクトを披露した。その中には,携帯端末のリソース効率化などに関する3個のプロジェクトが含まれ,大きな注目を集めた。これら3個のプロジェクトを以下で詳しく説明する。

 第1に,「Search ON the GO(SONGO)」と呼ばれる「Mobile Search and Advertisement Cache Architecture」関連のプロジェクトである。このプロジェクトでは,ユーザーが頻繁に検索するインターネットおよびユーザーが滞在する地域などに関連した情報を携帯電話機にキャッシュする技術を研究する。Windows Mobile搭載の携帯電話機を用いたテストでは,3G通信を使って検索を行うより速度が16倍速くなり,エネルギーの利用効率を23倍に高められるとした。

 この技術は,Microsoft社の携帯端末向けの検索サービスのログ分析を利用する。この分析によると,ユーザーからの検索条件の60%は6000個の検索条件や4000個のインターネット・リンクに集約される。さらに,全体の50%のユーザーの検索の70%は以前に行った検索を繰り返すという。この技術では,携帯電話機の検索を分析して,人気の検索結果のインターネット・リンクや店舗の情報などを携帯電話機にキャッシュする。

 第2のプロジェクトが「Contrail」と呼ばれるもので,「Mobile-to-Mobile Networking in 3G Networks」分野に該当する。Contrailプロジェクトでは,3G通信のネットワーク上でユーザーのプライバシーを守る目的で,プライバシー損害につながる可能性がある情報を暗号化して,ピア・ツー・ピア通信を行う。

 携帯電話機のユーザーは他のユーザーにコンテンツを提供するために,自らの位置情報や写真などのコンテンツを頻繁にサーバーにアップロードしている。これらのコンテンツの共有がプライバシー損害につながる恐れがあり,Contrailではこうした問題の解決を狙う。

 プライバシー損害を避けるため,Contrailではユーザー同士がお互いに共有を希望する情報を決める。情報を受ける側のユーザーのアプリケーションが希望する情報の「フィルター」を発行する。このフィルターを情報発信側の携帯電話機に転送する。例えば,ユーザーAとユーザーBが友達で,ユーザーBがユーザーAが滞在する町を訪ねる際に情報提供を受けたいと希望する。この場合,ユーザーAのアプリケーションがユーザーBの携帯電話機にユーザーAが滞在する町の地理情報を含むフィルターを送る。ユーザーBがユーザーAの滞在する町に入ると,ユーザーBの携帯電話機は暗号化された地理情報をユーザーAの端末に転送する。こうしたシステムであれば,携帯電話機から頻繁に情報をサーバーに転送する必要がなくなるため,携帯電話機とネットワークの間の通信負担も減るという。Contrailは現時点ではWindows Mobile 6.5とWindows Azureのソフトウエア技術を利用している。

 第3が,「Mobile Assistance Using Infrastructure(MAUI)」と呼ばれるプロジェクト。MAUIはMicrosoft社の.NETソフトウエア技術を採用する携帯端末を対象に,端末にとって負荷が重い処理をサーバーやパソコンに任せる技術である。例えば,携帯端末が顔認識アプリケーションを搭載する場合, MAUIのソフトウエアが携帯電話機の電池の状況や通信状態などを計測しながら,必要に応じて,同アプリケーションの処理の一部をサーバーに任せる。これにより端末の負担を減らす。

 MAUIは,米Intel Corp.の研究開発部門が開発した「CloneCloud」技術に似ている(Tech-On!関連記事)。MAUIに関わる研究者によると,CloneCloudはサーバー機などのコンピュータが仮想マシンの内部でアプリケーションを制御する必要があるという。一方,MAUIでは,コンピュータがアプリケーションを仮想マシン内で制御する必要がないという。