東芝 代表執行役副社長の村岡富美雄氏
東芝 代表執行役副社長の村岡富美雄氏
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半導体事業の回復が大きく貢献
半導体事業の回復が大きく貢献
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2009年度は3四半期連続で黒字を達成
2009年度は3四半期連続で黒字を達成
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2010年度の伸びも半導体がけん引
2010年度の伸びも半導体がけん引
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 東芝は2009年度(2009年4月~2010年3月期)の連結決算を発表した(ニュース・リリース)。売上高は対前年度比4.1%減の6兆3816億円と2年連続で減収となったものの,営業利益は同3674億円改善の1172億円と黒字転換を果たした。純損失は同3239億円改善の197億円である。2010年度(2010年4月~2011年3月期)の業績見通しは,売上高が同9.7%増の7兆円,営業利益が同113%増の2500億円,純利益が同897億円改善の700億円としている。

 2009年度に対前年度比で4300億円の固定費削減を実施した効果などによって,全セグメントで営業損益が改善した。特に半導体事業は営業利益が対前年度比2822億円改善の23億円と黒字に転換し,利益改善に大きく貢献した。また,社会インフラ事業は営業利益が同231億円改善の1363億円と好調だった。一方,パソコン事業は販売台数を1500万台に伸ばしたものの,低価格化の影響によって特に欧州を中心に減収となり,営業損益は対前年度比233億円減少の88億円の赤字となった。ただ,携帯電話機やHDD/ODDの営業損益が大幅に改善したため,パソコンを含むデジタルプロダクツ・セグメントの営業利益は同275億円改善の133億円となっている。

 半導体事業はシステムLSI事業が減収だったものの,NANDフラッシュ・メモリ事業の売上高が需要の増加や価格の安定によって伸び,半導体事業全体の売上高は対前年度比5%増の1兆700億円となった。売上高の分野別内訳はディスクリートが1961億円,システムLSIが3464億円,メモリが5275億円である。四半期別の営業損益を見ると,特に2009年度第4四半期に営業利益が286億円と大きく伸びている。この内訳はディスクリートが5%,システムLSIが10%,メモリが85%であり,いずれも黒字となっている。

 半導体生産ラインの稼働率も高い水準を維持している。2009年度第4四半期および2010年度第1四半期のライン稼働率は,NANDフラッシュ・メモリを生産する四日市工場が100%とフル稼働を続けている。システムLSIを生産する125/150mmラインの稼働率は90%,同200mmラインは70%,同300mmラインは100%である。ディスクリートでは125/150/200mmラインの稼働率がいずれも100%だが,光半導体の生産ラインは60%の水準である。

 2010年度も「営業利益の伸びをけん引するのは半導体」(東芝 代表執行役副社長の村岡富美雄氏)である。全セグメントで増収増益,および黒字化を計画する。2010年度の半導体事業の売上高予想は1兆2100億円であり,内訳はディスクリートが上期1000億円,下期1100億円,システムLSIが上期1900億円,下期1800億円,メモリが上期3100億円,下期3200億円となっている。営業利益予想は1000億円(上期400億円,下期600億円)であり,このうち90%をメモリが占める。

 なお,2010年度の半導体設備投資は1600億円と対前年度比でほぼ倍増させる計画である。この中にはNANDフラッシュ・メモリを生産する四日市工場第5棟の建屋建設費用が含まれる。また,NANDフラッシュ・メモリの微細化に関しては,32nm世代品の比率を現状の65%から今後90%に増やす計画であり,2010年後半には2Xnm世代品の生産を開始する見通しである。