Adobe社のKevin Lynch氏(左)とWeb 2.0 ExpoのCo-Chair,Brady Forrest氏(右)
Adobe社のKevin Lynch氏(左)とWeb 2.0 ExpoのCo-Chair,Brady Forrest氏(右)
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Android搭載のGoogle社の「Nexus One」上で動作する,Flash 10.1採用のゲームを実演しているところ
Android搭載のGoogle社の「Nexus One」上で動作する,Flash 10.1採用のゲームを実演しているところ
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 2010年4月29日,米Apple Inc.,CEOのSteve Jobs氏は米Adobe Systems Inc.のソフトウエア技術「Flash」を批判するような文書「Thoughts on Flash」を公開した(同文書)。Adobe社,Chief Technology OfficerのKevin Lynch氏はこのApple社の“攻撃”に対して答える舞台として,米サンフランシスコ市で開催中「Web 2.0 Expo San Francisco 2010」と呼ぶイベントを利用した。

 Lynch氏はまず,今までのWebはオープンな環境にあった結果,技術イノベーションが早期に進んだと述べた。Flashで作成されたアプリケーションがiPhone OS上で動作しないことに関して,Lynch氏は「Apple社は彼らが認証したアプリケーションのみを採用可能な『ウォールド・ガーデン』を作りたがっている」と主張する。Lynch氏が舞台に登場する前,iPhoneを使っておもちゃのヘリコプターを操作する実演が披露されたことを受け,Lynch氏は「あのヘリコプターを操作するアプリケーションはiPhoneのみで動作する。自分の好みのスマートフォンから,同様の操作したくないのか?」と来場者に問うた。この言葉に対し,集まったWeb技術者の観客から大きな歓呼の声が上がった。

 Jobs氏の文書では,Flashのタッチ入力を用いたユーザー・インターフェース(UI)の貧弱さを指摘している。この指摘に対しLynch氏は,現在ベータ版として公開中の「Flash 10.1」(同ソフトウエアの端末側のソフトウエアのWebサイト)であれば,豊かなタッチUIの能力があり,かつタッチ・スクリーンを搭載する多数の機器に対応していると答えた。さらにAdobe社のソフトウエア開発環境「Creative Suite 5」は,iPhone OS上で動作するFlashアプリケーションを開発する技術を含んでいるという。この技術も優れた能力を備えていると,Lynch氏は主張した。

 Apple社はiPhone OS用SDKのライセンス規約を変更しており,iPhone OSでFlashを利用できないようになっている(Tech-On!関連記事)。これに関してLynch氏は,Apple社の本音は複数のOS上で動作するアプリケーションの登場を避けたいことにあるとみる。「Apple社は技術的というより,法的なゲームをやっている」(Lynch氏)。Apple社の動きを受け,Adobe社はApple社が手掛けているOS以外で,かつ複数のOSで動作するようにFlashなどのソフトウエア技術を展開する戦略を採るという。この戦略を対外的に示すかのように,Adobe社は米Google Inc.などの「Android」や米Palm, Inc.の「webOS」上でFlash 10.1が動作する試作バージョンを,今回のイベントのAdobe社ブースで披露した。この技術は,Google社が2010年5月19~20日に開催予定の開発者イベント「Google I/O 2010」において,正式に公開されるとみられる。