図1 国家電網が見せたV2Gのデモ
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図2 急速充電スタンドをV2Gに対応させた
図2 急速充電スタンドをV2Gに対応させた
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図3 充電スタンドのモニターで充電状況を確認できる
図3 充電スタンドのモニターで充電状況を確認できる
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 中国最大の電力事業者であるState Grid Corp.(国家電網)は,電気自動車(EV)と充電スタンド間で双方向に電力をやり取りする「Vehicle to Grid(V2G)」技術を上海国際博覧会(上海万博)の国家電網館近くのスペースで実演した(図1)。「EVの蓄電池を活用することで,電力網を安定的に運用しやすくなる」(国家電網傘下のShanghai Municipal Electric Power Co., Preparatory department for Enterprise Pavilion of Shanghai Expo, Publicity and PromotionのLi Shu氏)。例えば,太陽電池などの再生可能エネルギーの出力が急激に落ち込んだ際,数十~数百台のEVから電力網に電力を供給することで,停電などを減らせるという。Li氏は,V2Gの本格的な導入時期について,「EVの普及の進み方次第」とした。

 国家電網は,同社が開発した急速充電スタンドをV2Gに対応させた(図2)。EVをこの急速充電スタンドに接続すると,電力網の需給状況に応じて放電と充電が自動的に切り替わる。接続時,充電スタンドのモニターで電池残量や電力の流れを確認できる(図3)。EVと急速充電スタンドの通信には,車載LAN規格である「CAN(controller area network)」を使う。急速充電スタンドは直流に対応し,出力は最大30kW。電圧は200~350Vで,電流は0~100Aである。小型のEVであれば30分程度で満充電できる。国家電網はこのほか,普通充電スタンドも展示した。普通充電スタンドは単相の交流に対応し,最大出力は5kWとなる。電圧は220Vで,最大電流は22A。充電スタンドを利用するには,専用のICカードをスタンドに挿入する必要がある。

 国家電網は,V2G対応の急速充電スタンドを2台試作した。一つは上海万博の会場に,もう一つは上海市の漕宝路地区の充電ステーションに設置した。漕宝路地区の充電スターションには急速充電スタンドのほか,普通充電スタンドも11台ある。普通充電スタンドは全部で約30台試作したという。

 実演で用いた車両は,中国Shanghai Automotive Industry Corp.(SAIC,上海汽車)が開発した栄威(Roewe)350のEV版である。電池容量が35kWhのLiイオン2次電池を搭載し,満充電1回当たりの走行距離は310kmとなる。車両側の接続口の形状は,普通充電と急速充電ともに同じ形状で対応できるようにした。電圧やコネクタの形状の違いなどから,充電スタンドの仕様は日本で標準化を進めている仕様とは異なるようだ。