iPhone OS 4を紹介するSteve Jobs氏
iPhone OS 4を紹介するSteve Jobs氏
[画像のクリックで拡大表示]
iPhone OS 4に含まれているAPIの一部
iPhone OS 4に含まれているAPIの一部
[画像のクリックで拡大表示]
新しいユーザー向け機能の例
新しいユーザー向け機能の例
[画像のクリックで拡大表示]
ユーザーがバックグラウンドで動作中のアプリケーションを切り替えするためのアプリケーション・バー。画面の下に表示されている
ユーザーがバックグラウンドで動作中のアプリケーションを切り替えするためのアプリケーション・バー。画面の下に表示されている
[画像のクリックで拡大表示]
アプリケーションの画面の下に「iAd」による映画広告を表示した例
アプリケーションの画面の下に「iAd」による映画広告を表示した例
[画像のクリックで拡大表示]
iAdの機能を使って,ユーザーが広告をクリックしたときに映画の登場キャラクタを表示したところ。音声も再生できる
iAdの機能を使って,ユーザーが広告をクリックしたときに映画の登場キャラクタを表示したところ。音声も再生できる
[画像のクリックで拡大表示]

 米Apple Inc.は2010年4月8日,同社本社で開催した報道機関向けのイベントで,同社の携帯端末「iPhone」向けのOSの新版である「iPhone OS 4」を公開した(発表資料)。同社のCEOであるSteve Jobs氏は,iPhone OSを「世界で最も先進的な携帯端末OS」と呼び,「多くのソフトウエア開発者の要求を取り入れ,iPhone OS 4には1500以上の新しいAPIを用意した」と述べた。ユーザーが利用できる新機能も100個以上追加されている。

 Apple社は同日,iPhone OS 4ベータ版をiPhone OSのアプリケーション開発者に向けて公開した。2010年夏ごろに,iPhoneおよびiPod touchのユーザーに向けてiPhone OS 4の正式版を提供する予定である。iPad向けのiPhone OS 4は2010年の秋ごろの提供を予定している。

 イベントでは,Apple社は主に以下の七つの機能を強調した。

  • マルチタスク
  • アプリケーション内に表示する広告の配信システム「iAd」
  • ゲームで遊ぶ複数のユーザーをゲーム・アプリケーションから招待するといった機能を実現するAPI群「Game Center」
  • iPhoneの中のアプリケーションをフォルダーによって整理する機能
  • メール・アプリケーションの機能強化。複数の電子メール・アカウントからのメールを統一して表示する機能などを追加した
  • 企業での利用に向けた新機能。データの暗号化や企業内で利用する専用アプリケーションの配信機能など
  • 電子書籍アプリケーション「iBooks」。iPad向けに開発されたものをiPhoneでも利用できるようにする

「マルチタスクは他社より優れている」と主張

 iPhone OS 4の新機能の中には,米Google Inc.などが手掛けている「Android」や米Palm, Inc.の「webOS」といった携帯端末向けOSで既に実現されている機能もある。その最たるものがマルチタスクだ。Apple社もこの事実を認めている。「たしかに我々が最初にマルチタスクに対応したわけではない。ただし,最も優れた実装を提供するのは我々だ」(Jobs氏)。

 Apple社は,従来の携帯端末向けOSのマルチタスク実装には「バックグラウンドで動作するアプリケーションが電力を消費することで駆動時間が短くなったり,CPUの負荷が増えることでフォアグラウンドで動作するアプリケーションに必要な処理性能が足りなくなる」といった問題があったと主張する。こうした問題を避けるため,iPhone OS 4にはアプリケーション開発者が利用できるマルチタスク関連のAPI群を用意したという。例えば,バックグラウンドで動作するアプリケーションで,ステート情報を保持しつつ動作を最低限に抑えるといったことが可能になる。バックグラウンドのアプリケーションからユーザーに通知を送る機能も追加した。オンライン・ラジオのWebサービス「Pandora」を手掛ける米Pandora Media, Inc.は,こうした機能を利用することで,1日中バックグラウンドで動作させることが可能なiPhone用アプリケーションを開発したという。

 ただし,マルチタスクは「iPhone 3G」以前の製品では利用できない。iPhone OS 4のすべての機能が利用できるのは,「iPhone 3GS」もしくは2009年に発売された第3世代の「iPod touch」に限られる。

「iAd」でGoogle社に挑戦

 「我々の調べによると,ユーザーは携帯端末では検索よりもアプリケーションに多くの時間を費やしている」。Jobs氏は,検索による広告収入で莫大な利益を上げているGoogle社を意識するようにこう述べ,広告配信システム「iAd」を紹介した。iAdは,iPhoneのアプリケーション内に表示する広告を作成・配信するシステムである。iAdの広告はHTML 5.0によって実現されており,ユーザーに対話的に情報を提供したり動画を再生したりできる。元のアプリケーションにも簡単に戻れるという。iAdでは,Apple社は広告枠の販売や広告の配信を担当する。広告の売上の60%はアプリケーションの開発者に還元する。