無線LANの標準化を進めるIEEE802.11委員会は,無線LANのスマートグリッド分野への適用を目指したアドホック・グループを立ち上げた。名称は「802.11 SmartGrid」。900MHz帯など,1GHz以下の周波数帯の活用などを念頭に,討議を開始している。

 2010年3月14日から,米フロリダ州オーランドで開催されている802.11委員会の総会において,ディスカッションを行った。既に前回大会で,アドホック・グループとして設立されていたが,今回,より具体的な討議を開始した格好である。無線LAN用チップセットのメーカーなどが中心となり,スマートグリッド分野への応用の可能性を議論している。

 「あくまでアドホック・グループで,仕様策定の目標などは決まっていない」(グループを取りまとめている,802.11WG議長のBruce Kraemer氏)としており,標準仕様策定に向けたタスク・グループや,スタディ・グループに昇格するかどうかは未定である。ただし,802委員会関係者の間では,「11がいよいよスマートグリッド分野の標準方式策定に乗り出した」,という見方が少なくない。

 802ファミリでは既に,近距離無線通信の標準化を進める802.15において,スマートメーター向け通信方式の策定を目指すタスク・グループ「802.15.4g」が活動している。このほか,WiMAXの伝送方式標準化を進める802.16においても,スマートグリッドへの適用を目指した拡張仕様「GRIDMAN(Greater Reliability In Disrupted Metropolitan Area Networks)」の討議が始まっている(ニュースリリース)。こうした動きに比較すると,802.11はこれまで目立った取り組みを進めていなかった。

 無線LANの業界団体であるWi-Fi Allianceも,スマートグリッド市場に強い関心を示していることから,その方式策定を担う802.11も動き出したと言えそうだ。「スマートグリッド市場においては,無線通信が大きな役割を担う。その場に,802.11がいないのはおかしい,という議論になったようだ」(ある802委員会の関係者)。

 アドホック・グループでは今回,1)米FCCが米議会に提出した「National Broadband Plan」で,スマートグリッドなどに向けた無線周波数の新たな活用に言及していることや,2)1GHz以下の周波数帯の活用の可能性,そして3)米NISTがスマートグリッド分野の無線通信方式の候補選定に求めているデータおよび評価手法の扱い,などについて討議を行った。なかでも,NISTとの連携を重視して議論を進めていく方針だ。