―― その1その2その3その4からの続き ――

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 「Android」についても私なりの考えを述べておきます。Androidの魅力は,米Microsoft Corp.のOSと違ってライセンス料が無料であることです。また,従来のLinuxディストリビューションとは異なり,Linuxの上にフレームワークが用意されているため,開発コストが下がることも期待できます。本当に下がるかどうかは分かりませんが。

 機器開発に対する要求は,今までよりも増えています。グラフィックが必要だとか,アプリケーションが必要だとか。要求が増えたにもかかわらず,そう簡単にソフトウエア開発費を上げられない状況の人にとっては,Androidはいい選択肢かもしれません。まず,ライブラリを共通化できます。また,アプリケーションの共通化も期待できます。ただし,本当にアプリケーションの互換性が保てるかどうかにはやや疑問が残ります。

 無視できないのは,Androidによって参入障壁が思いきり下がるということです。これは,市場に新規参入するメーカーにとってはいい話ですが,今までの市場を守らなければならない立場のメーカーにとっては,かなり厳しい話です。特に携帯電話機は,中国などのメーカーが6カ月程度でAndroidを搭載した携帯電話機を作れるようになってしまいました。そうした中で,どのようにして戦っていくのか,どのように差異化するのか,ということを考えなければなりません。

 Androidの上で踊らされてる人がたくさんいますが,米Google Inc.が最終的に目指していることは,Androidによって収益を上げることではなく,デバイスやアプリケーションをコモディティー化して,人類全体のネット依存度を上げることです。そのことを忘れてはなりません。「Androidはすごい」とがんばって機器を開発してみたが,実際には全然もうからなかった,という会社がたくさん出るのではないかと心配しています。

 携帯電話会社に買い取ってもらえる台数が決まっている端末を開発する際にAndroidを使うことでコストを下げる,といった従来のビジネスモデルの延長でAndroidに取り組むのであれば,まだいいでしょう。しかし,Androidで新しい端末を開発するとか,それでiPhoneに対抗するといったことを考えると,たぶん失敗します。Google社の話に乗るなら,どこで差異化するのかを考えておかなければなりません。

 Google社の話に乗ったとたん,デバイス,OS,CPU,通信といった,消費者とサービスの間にある部分はすべてゼロに近づいていきます。ですから,サービスかコンテンツでビジネスをする覚悟がなければ,Google社の話に乗ってはならないと思います。Google社にインフラで対抗するのは難しいですから,コンテンツで勝負したり,Google社のインフラ上にサービスを構築し,差異化することでデバイスの低価格化を防いだりする,といった戦略を考えなければなりません。