図1 新型電子式メータの概観
図1 新型電子式メータの概観
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図2 実験の概要
図2 実験の概要
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 東京電力は2010年3月11日,無線通信を利用した電力計「新型電子式メータ」を使った実証実験を始めると発表した(図1)。住宅などの電力利用量を測定する検針作業の負担低減を狙う。2010年10月から,9万台程度の新型電子式メータを,東京都清瀬市や小平市などの住宅を中心に設置する。実験期間は2~3年間。最初の1年間を主に機能の検証に費やし,その後,運用に向けた実験を約1年間程度かける計画。マルチホップ方式の無線通信仕様を使う。新型電子式メータの開発は大崎電気工業や東光東芝メーターシステムズ,富士電機,三菱電機が手掛ける。

 無線通信を利用した電力計としては,欧米を中心に導入が進む「スマートメーター」がある。東京電力は今回の新型電子式メータに関して,「双方向通信を利用した電力計という意味で,スマートメーターと大きな違いはない」(同社)とする。ただし,欧米で検討されているような,スマートメーターを用いて住宅内の電力利用を制御するといった試みを「実験する予定はない」(東京電力)という。

 新型電子式メータでは,住宅内の電力利用量のデータなどを30分ごとに電柱などに設置した「集約装置」に収集する。集めた電力情報のデータを,光ファイバを利用して東京電力のデータ・センターに収集する。実証実験を清瀬市と小平市で実施するのは,「光ファイバ用ケーブルが既に広く敷設されており,実験に向いた環境」(東京電力)にあるためとする。集約装置の設置台数については,実証実験により決める計画で「数十台で済むか,数百台となるか現段階では分からない」(東京電力)。

 東京電力は,新型電子式メータを導入する需要家への利点として大きく四つ挙げる。(1)電力の利用状況を「見える化」できること。具体的には,需要家に対してWeb上で時間帯ごとの電力使用状況を知らせることや,最適な電気契約の内容などをアドバイスする。(2)停電時の復旧作業を迅速化できること。新型電子メータにより,原因個所の特定が容易になるとみる。(3)利便性が向上すること。例えば,引っ越し時の電気契約の変更手続きなどが簡素化できるという。(4)プライバシーの保護に役立つこと。無線通信により検針できるため,検針員が住宅内に立ち入らなくて済むようになる。