プレビュー会見で講演する東工大 教授の細野氏
プレビュー会見で講演する東工大 教授の細野氏
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 東京工業大学 教授の細野秀雄氏らの研究グループは,一酸化スズ(SnO)で,n型半導体とp型半導体を開発し,酸化物半導体でのCMOS回路の実現にメドをつけた。2010年3月10日,応用物理学会が開いた2010年の春季応用物理学会学術講演会の報道機関向けプレビュー発表会の場で発表した。

 細野氏の研究グループは,2008年にSnOを用いたp型半導体でTFTを作製している。今回は,SnOが理論的にn型半導体にもなり得ることに着目し,p型半導体にアンチモン(Sb)を不純物として添加した。すると,Sbの比率が約5%を超える場合に,材料がn型半導体の特性を示すことを確認できたという。p型とn型共にSnOを基とするホモpn接合の素子も実際に作製し,ダイオードとして動作することを確認した。

 細野氏は,これによって,SnOで「酸化物半導体で大きな目標になっているCMOS回路の実現に接近した」とする。CMOS回路の他には,バンドギャップが2.0eVと高いことを利用してタンデム構造の太陽電池の短波長光向けpn接合として利用するといった使い方が考えられるという。

 ただし,今回得られたキャリア移動度は,p型が2.4cm2/Vs,n型が2.3cm2/Vs。ディスプレイ向けのTFTなどでは利用可能だが,より高速動作が必要なデバイスには十分とはいえない。細野氏は,「酸化物では,移動度を10cm2/Vs以上にするのは難しい。より高い移動度を狙うなら別材料を使う」と述べた。

 より詳細については,第57回応用物理学関連連合講演会(東海大学 湘南キャンパス,2010年3月17~20日)で紹介するという(講演番号:17a-TL-11など)。