2010年3月9日,私的録画補償金管理協会(SARVH)が東芝に対し,未納付の私的録画補償金相当額である3264万5500円の支払いを求めた民事訴訟(事件番号:東京地方裁判所 平成21年(ワ)第40387号)の第2回弁論が,東京地方裁判所,第627号法廷で開かれた。

 この裁判は,東芝が2009年2月に発売したアナログチューナーを搭載しないDVD録画機について,著作権法で定められた「録画補償金」を製品価格に上乗せして徴収せず,また,2009年9月末まで当該機種の補償金相当額をSARVHに納めていないことに対し,SRAVHが損害賠償3264万5500円の支払いを求めているもの。

 東芝がこうした行動に出たのは,当該機が録画補償金の対象機器になるかどうかまだ決定していないと考えているからだ。このため,製品価格に補償金相当額を上乗せして販売することで,補償金制度の適用に反対する消費者の権利を侵すことになると釈明している。

あえて法的に評価すると,どうなるか


 この日の裁判で裁判官は,被告の主張に関連して,メーカーが製品価格に上乗せしてユーザーから徴収している録画補償金が,税務上,会計上はどのような取り扱いになっているか,実態を詳しく説明するように被告に求めた。「実態が審理をすぐさま左右するわけではないが,判断には細部にわたる理解が必要」(裁判官)。

 また,被告が著作権法104条5で規定された「製造業者の協力義務」について,「単なる協力行為」を規定していると主張していることに関連して「それをあえて法的に評価すると,どうなるか」の説明を求めた。また,料金上乗せ方式とは別のメーカーの協力手法として「プリペイド・カード方式」などを例示している点に関して,他の手法案や海外の方式なども追加説明するように求めた。

 原告代理人の日比谷パーク法律事務所の久保利英明氏は,「知る限り,原告が訴状でこれほどすべてを明らかにしている事案はないはず」と発言し,迅速な審理を求めた。2010年4月以降に別のメーカー(パナソニックと思われる)に対する同種の提訴を行う可能性があることに触れ,「裁判所がこの二つの案件を,一つにする意図があるように邪推してしまう。我々としてはそれは困る」(久保利氏)とした。

 また原告代理人は,製造業者の協力義務の内容について,「我々が(補償金の徴収と支払いを)法的義務と考えるのに対し,被告は(法的義務を負わない)プログラム規定(訓示規定)と主張して完全に対立している。他の論点をおいてこれだけ議論しても良いのではないか」(久保利氏)と述べた。

 一方,被告代理人の長島・大野・常松法律事務所の田中昌利氏は,「原告の主張に関して,我々は答弁書で網羅的に反論している。この反論に対して原告から反論があれば,再反論する予定である」と述べた。

 裁判官は「二つの裁判を一つにするという意図はない」「論点は必ずしもメーカーの協力義務だけではない」と,原告代理人の意見を退け,「裁判所としてもこの件を早く終わらせる意志がある」とした。そのうえで,1カ月後の4月9日を期日に,文書でお互いの主張を開示し,それに対する再反論をさらに1カ月後の5月14日に文書を提出する形で審理を進めることを提案した。「そこまでやれば,おそらく論点は出尽くすのではないか」(裁判官)。

 次回,口頭弁論は5月25日13時30分から行われる。