東洋鋼鈑と産業技術総合研究所(以下,産総研)は,新規に開発した低コスト金属基板を用いたCIGS(銅-インジウム-ガリウム-セレン)太陽電池で,16.7%という高い変換効率を達成した。東洋鋼鈑は,今回開発した金属基板を2011年前後に商品化する方針だ。

 CIGS太陽電池は薄膜系太陽電池の中では変換効率が高いので,両者は結晶シリコン太陽電池の次を担う太陽電池として期待している。CIGS太陽電池を成膜する基板は,これまでガラス製が多かったが,柔軟性を備えた太陽電池向けに金属基板上に成膜する技術が開発されている。これまではCIGS太陽電池に悪影響を与えにくいチタン箔やモリブデン箔をベースとした金属基板が多く研究されてきたが,大面積材料の供給やコスト面で課題があったという。こうした課題を解決するために,安価なステンレス箔の利用も検討されているが,太陽電池の高温成膜時に金属基板の成分がCIGS層に拡散し,発電効率に悪影響を与えるという問題があったとしている。

 東洋鋼鈑は今回,ステンレス箔に比較してさらに低コスト化が可能な低炭素鋼ベースの極薄金属基板を開発した。ベース材単体の価格は,従来のチタン箔の1/10以下,ステンレス箔の半分程度,ポリイミドフィルムの1/4程度となる。

 CIGS太陽電池の効率を阻害する元素の拡散に対しては,独自の表面処理膜を形成させること抑制した。この表面処理膜は大気中で成膜できるので低コストのプロセスで対応できるとしている。

 産総研は,CIGS太陽電池で世界最高レベルの高効率を達成しており,金属基板ベースのフレキシブル太陽電池の開発も進めてきた。さらに,大面積モジュールの開発にも取り組んでいる。東洋鋼鈑が開発した表面処理膜付き低コスト金属基板を用い,産総研がCIGS太陽電池を試作したところ,小面積セルの変換効率16.7%(真性変換効率,セル発電面積約0.5cm2)だった。この変換効率は,「低コスト基板を用いた場合の効率としては極めて高い」(両者)としている。