東レは,新規材料を使った逆浸透膜の開発を進めていることを明らかにした。「国際ナノテクノロジー総合展・技術会議『nano tech2010』」と併催している「国際水ソリューション総合展『InterAqua・2010』」(2010年2月17日~19日,東京ビッグサイト)のパネル展示で技術概要を示したもの。

 海水淡水化プラントに使われる逆浸透膜は,同プラントの増加によって需要が大幅に伸びている。一般的な膜素材は芳香族系ポリアミドだが,東レが開発を進めている新規膜材料は,有機材料と無機材料を複合化させたものだという。この膜は,芳香族系ポリアミドに比べて耐薬品性に優れるため,海水など原水の前処理(殺菌や有機物の分解を行う)で薬品を使った処理が可能になるので,加圧などに使うエネルギを抑制できる。同社では,前処理に使うエネルギを60%削減できる可能性があるとしている。また,新規の逆浸透膜は膜に開いている微小な穴の大きさを水分子の大きさに合わせて均一に調整できるので,高い比率で水だけを透過させられる。このため,膜処理プロセスでも加圧に使うエネルギを約30%削減できる可能性があるという。

 新規材料の物質名などは明らかにしていないが,「官能基を変えるなどの変更はあるかもしれないが,基本的な材料構成は固まっている。生産コストも現状の逆浸透膜と比較して大幅に増えることはない」(同社の説明者)という。今後,2011年度に膜モジュールを作製し,2012~2014年度には実証プラントで検証する計画。なお,この研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「省水型・環境調和型水循環プロジェクト」の一環として進めている。