左が従来のFフィルム,右が新開発の高靭性Fフィルム。曲げても割れないということで,折鶴をつくってデモンストレーションしている。フィルムは溶融押し出し成形で作製する。
左が従来のFフィルム,右が新開発の高靭性Fフィルム。曲げても割れないということで,折鶴をつくってデモンストレーションしている。フィルムは溶融押し出し成形で作製する。
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 グンゼは,高耐熱透明フィルム「Fフィルム」の高靭性グレードを開発し,サンプル出荷を開始した。国際ナノテクノロジー総合展・技術会議「nano tech2010」(2010年2月17日~19日,東京ビッグサイト)でサンプルを展示(図),電子ペーパーやフレキシブル太陽電池,有機EL照明などの基板向けを狙う。

 これまでのFフィルムの特徴である耐熱性(180℃プロセスで安定),光学特性(透過率92%,ヘイズ0.2%以下,リターデーション5nm以下),寸法安定性(150℃・30分条件下での熱収縮率0.10%以下,吸水率0.01%)といった特性を保ったうえで,Fフィルムの弱点である脆さを改善した。

 従来のFフィルムは,同分野で汎用的に使われているPETフィルムと同じ製造プロセス(ITOスパッタリングや有機材料のコーティングなど)をそのまま適応すると,条件によっては脆さからくる割れなどの問題があった。新高靭性グレードでは,靭性の定量値は明らかにしなかったが,「PETとまったく同じプロセスを適応しても問題ない」レベルまで高靭性化した。

 従来のFフィルムよりもフィルムの製造工程が増えたが,フィルム厚を50μmと薄くしたので,コストアップを抑えたという。

 電子ペーパーやフレキシブル太陽電池,有機EL照明の用途では,PETフィルムよりも高い耐熱性の高分子フィルムが求められているが,まだ決定版はない状況である。PEN(ポリエチレンナフタレート),PES(ポリエーテルサルフォン),PSF(ポリサルフォン)に加え,Fフィルムが検討されている段階である。

 グンゼによると,Fフィルムは,PENフィルムなどと比べ,寸法安定性や光学特性に優れる点をアピールして,フレキシブルなエレクトロニクス機器で普及を狙いたいとしている。特に,基板が大型化したり,細かいパターンを形成するケースでは,高い寸法安定性が求められるので,Fフィルムの特徴が生かせると見ている。

 なお,Fフィルムの組成は,「熱可塑性樹脂」という以外明らかにしていない。