トヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏(左)と,同社代表取締役副社長の佐々木眞一氏
トヨタ自動車代表取締役社長の豊田章男氏(左)と,同社代表取締役副社長の佐々木眞一氏
[画像のクリックで拡大表示]

 トヨタ自動車が2010年2月5日に開いた,一連の品質問題に関する記者会見について,質疑応答の内容を後半部分を掲載する〔報告記事の(),()〕。「プリウス」だけでなく,アクセルペダルの欠陥に伴うリコールについても,対応の妥当性を確認する質問が相次いだ。

 会見に臨んだのは,同社代表取締役社長の豊田章男氏と,同社代表取締役副社長の佐々木眞一氏。今回の件は,発言のニュアンスも非常に重要な要素と考えられることから,質問や回答は口語をほぼそのまま書き起こした。

(米The Wall Street Journal)もしかしたら佐々木さんの方が適任かもしれませんが,もし豊田さんも分かりましたらお答えください。今回,アクセルペダルに関しまして,解決策が発表されましたけど,この件に関しては同じペダルで同じ材質,欧州で既に(2009年)8月に手を打ってらっしゃいますね。そこでペダルの改善案を提示し,それは実施されているわけですけど,原因は昨年の前半に究明されたと佐々木さんはおっしゃっていますけど,その究明された原因,欧州で改善案を出し,実施している。それなのに米国でペダルに関して何もされなかった,要するに(2009年)8月に欧州で実施した改善案から,5~6カ月経って,初めて米国で改善案が示されるわけですけど,なぜここまでずれ込んだのか,詳しく説明していただけますでしょうか。

佐々木氏の回答

 事実関係で申し上げますと,確かに最初にお客様の申し出があったのは,欧州で販売しております右ハンドルのクルマでアクセルペダルの戻りが悪いというご指摘がありました。これを調べて,実際の欧州での改善は8月にあったと申し上げましたと思いますが,その時点におきまして,当然,ほかのところは大丈夫か,ということは,市場の情報をウォッチしていたわけであります。米国では,その時点では,気候も夏でございましたので,湿気といいますか,結露現象ですので,米国ではその時点ではそういう不具合の発生がたまたまなかったのだろうと思います。それが昨年の秋口以降,米国でも発生が報告されて,確か昨年の末までで十数件の米国内での報告があったと思います。そういう発生の報告があった時点で,やはり同じ現象ではないかということを確認して,欧州の対策を横並びで展開したと。経緯から言うとそういうことでございます。

 実は,私どもの会社の中の,いわゆる生産品をどう改善していくかという部隊があるわけです。これは,設計を中心にした部隊であります。ここが良かれと思うことは遅滞なく展開すると。一方で,市場の情報をウォッチしていくと,市場措置が必要かどうかということをいつも検討している部隊,こことの時差といいますか,連携が必要なわけでありますけど,実際にこの問題が市場の措置を必要とするのではないかというふうに判断を,判断をといいますか,そういう活動が見えてきたのが,実は今年の初めぐらい,昨年の末から今年の初めぐらいということで,多少量産品の切り替えを指示したタイミングと,市場措置のタイミングがそうなっておったという,決断をするタイミングがそうなっておったという事実関係です。

 故意に何かをやったとか,ということでは別にございませんけど,いろんな疑念を皆様方に抱かせてしまったようなことについて,我々の方の,先ほど申し上げた委員会の中でも,きちっと透明度の高い情報公開ということも大きなテーマとして取り上げて参りたいと思いますので,よろしく皆様方のご指導,ご意見等をいただきたいと思います。

(毎日新聞)先ほどですね,今日このタイミングでご説明にいらっしゃった経緯について,これまでは現場に詳しい,分かっている人が出てですね,お客さんの不安があるのでご説明に本人が出られたということですけど,今までは現場の方が説明すれば不安を払しょくできると考えていたけど,その結果払しょくできなかったから社長自ら出て来られた,逆に出て来ざるを得なかったと考えられたのでしょうか。その部分もう少し詳しく教えてください。

 それからもう1点,プリウスについてですね,今後どういう対応を採っていくかということは検討中という話がありましたけど,会社としての責任,それから今回の問題がここまで広がったですね,そういう責任についてはどこにあって,それの例えば処分,責任の取り方ですね,そういうことについて,今どのようにお考えになっているのか教えてください。

豊田氏の回答

 決してご想像のような形ではございません。いつ私が出ても,また副社長が出ても,誰が出てもトヨタとしてはワンボイスでやっているつもりでございます。あえて今日,この時間(補足:会見は21時に開始)にこうやって私が出て参りましたのは,より顧客目線で,顧客目線をファースト・プライオリティーでやりますよというようなことを,直接,メディアの方を介して,お客様に訴えることができれば幸いだなということで,出て参ってきただけのことでございまして,ご想像のようなことはございません。今後も順次ですね,いろんな転回点があれば,私かもしくはそれに準じる者が出て参りますので,私が出てきたからどうだとか,そうしたことは決してございません。ただ,誰が出てきても,お客様を思う気持ちは私と同じであるというふうにはぜひお考えいただきたいと,思います。

 そして責任に関しては,今は一日も早くこの信頼を取り戻すために,現在,リコールとして処理させていただいているものについては一日も早くお客様にちゃんとお直しして,乗っていただくということを一日も早く進めていくことだと思っています。(次ページへ