授章式後の記念撮影 前列で赤い花を付けているのが受賞者 なお,受賞者4名に加えて,1位の研究のチーム・メンバー2名も赤い花を付けて登壇している。Tech-On!が撮影。
授章式後の記念撮影 前列で赤い花を付けているのが受賞者 なお,受賞者4名に加えて,1位の研究のチーム・メンバー2名も赤い花を付けて登壇している。Tech-On!が撮影。
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 日本の大学・研究機関に所属する若手研究者の支援を目的とした「ドイツ・イノベーション・アワード(正式名:ゴットフリード・ワグネル賞)」の授賞式が2010年2月8日に東京都内で行われた(ニュース・リリース)。同賞は,在日ドイツ商工会議所とドイツ企業12社が2008年度に創設したもので,2009年度は2回目。今回は4名が受賞した。

 今回は全国34の大学・研究機関から63件の応募があった。審査対象は,環境・エネルギー,健康・医療,安心・安全の三つの分野で,現在進行中の研究または過去2年以内に完了した研究成果。応用研究分野としては自動車・輸送機器,化学品・素材,エレクトロニクス・フォトニクス,医療機器・診断技術,バイオテクノロジー・医薬品,ものづくり・製造プロセス・機械,エネルギー,都市基盤整備・建設分野などが該当する。

 授賞式で選考過程を説明した相澤益男氏(内閣府総合科学技術会議議員、東京工業大学・元学長)によれば,従来手法にとらわれない革新的な研究で,かつエコや地球環境にとっても良い研究が選ばれたとする。3段階の選考を経て,1位1名,2位1名,3位2名の合計4名が受賞した。

 1位には,「低温で強くて壊れにくい鋼の開発の研究」を行った,独立行政法人 物質・材料研究機構の主幹研究員木村勇次氏(41歳)が選ばれた。高い靭性と高い強度(1500M Pa以上)を持つ鋼の製造手法を開発した。CoやNiなどの希少金属が少なくて済むことや,500~700℃といった低い温度で製造できることも特徴だという。

 2位には,「三次元積層型集積回路のための自己組織化チップ実装技術に関する研究」を行った,東北大学 大学院 工学研究科 バイオロボティクス専攻 助教の福島 誉史氏(34歳)が選ばれた。液体の表面張力を利用した自己集成によって,複数のICチップを多段積層する。ロボットを使う既存手法に比べて製造時間が短いことや,位置合わせ精度が高い(400nm)ことが特徴である。

 3位は「生分解性バイオポリエステルの高性能化」を行った,東京大学 大学院 農学生命科学研究科 高分子材料学研究室 准教授の岩田 忠久氏(43歳)と,「Claudin binder を利用した粘膜ワクチン の開発」を行った大阪大学 大学院 薬学研究科 生体機能分子化学分野 准教授近藤昌夫氏(40歳)が受賞した。

 1位には400万円,2位には200万円,3位には100万円の賞金が贈られた。さらに,受賞者全員に副賞として,最長2カ月間にわたるドイツの研究機関・大学での研究活動のための助成金が授与される。