図1 パナソニックが発表した3D映像対応のPDPテレビ,BD対応機
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図2 3D映像視聴デモの様子
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図3 3D映像の表示原理
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図4 アクティブ方式の液晶シャッター搭載メガネ。重さは63g
図4 アクティブ方式の液晶シャッター搭載メガネ。重さは63g
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図5 BDプレーヤー/レコーダーにはお試しソフトを同梱する
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図6 発光効率が高まったことでクロストークを低減
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図7 液晶シャッターの開閉タイミングの精度を高める
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図8 3D映像の符号化形式にMPEG-4 MVCを採用する
図8 3D映像の符号化形式にMPEG-4 MVCを採用する
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図9 BDに格納された3D映像を復号化する仕組み
図9 BDに格納された3D映像を復号化する仕組み
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 パナソニックは2010年2月9日,3次元(3D)映像の表示に対応したPDPテレビ「3D VIERA VT2」シリーズを発表した(図1,図2,ニュース・リリース1)。3D対応のBlu-ray Disc(BD)レコーダー/プレーヤーも合わせて提供する(ニュース・リリース2ニュース・リリース3)。2010年4月23日に発売する予定。「テレビの楽しみ方を変える。リビングに引きずり込まれるような臨場感をお届けしたい」(同社 デジタルAVCマーケティング本部 本部長 西口史郎氏)と意気込む。

 PDPテレビは画面寸法が54型と50型の2機種,BDレコーダーは内蔵するHDD容量が2Tバイト品と1Tバイト品,750Gバイト品の3品種,BDプレーヤーは1品種を提供する。価格はすべてオープン。市場想定価格は,PDPテレビは54型品が53万円前後,50型品が43万円前後,BDレコーダーは2Tバイト品が30万円前後,1Tバイト品が20万円前後,750Gバイト品が16万円前後,BDプレーヤーが13万円前後とする。「3D対応による価格プレミアムは,テレビが7万円,BDレコーダーが2万円の合わせて9万円である。お買い求めやすい価格設定をして,3Dの世界を広げていきたい」(パナソニックの西口氏)という。

PDPの発光効率向上でクロストークを低減

 3D映像用の表示には,120Hz駆動のPDPとBDプレーヤー,アクティブ方式の液晶シャッター搭載メガネを組み合わせた「時分割方式」を採用する(図3)。これは,左目と右目用の映像を1フレームごとに切り替えて表示し,これと同期するように液晶シャッターで右目と左目の視界を交互に閉ざして,左右の目に異なる映像を見せることで3D表示を実現するもの。1920×1080画素のフルHD映像で,3D映像を見ることができるのが特徴である。パナソニックは,2008年に開催した「CEATEC JAPAN 2008」以降,展示会ではすべて時分割方式による3D映像のデモを披露している(Tech-On!の関連記事1)。

 今回,製品化した3Dテレビを購入すると,アクティブ方式の液晶シャッター搭載メガネが1個,同梱される(図4)。追加で購入する際の市場想定価格は,1万円前後になるという。コンテンツに関しては,映画会社など各社から発売予定のBDコンテンツだけでなく,BDプレーヤー/レコーダーに「販売キャンペーンとしてお試しソフトを同梱する予定」(パナソニックの西口氏)という(図5)。

 時分割方式による3D映像の表示では,左目と右目用の映像が重なり合うとクロストークが発生してしまうという課題がある。パナソニックは,3Dテレビの製品化にあたり,PDPと液晶シャッター搭載メガネ,BDプレーヤーに改良を加えることで,改善を図ったとする。

 PDPについては,2007年の同社従来機種に比べて,発光効率を4倍に高めたPDPを採用する。このPDPは,2010年1月に開催された「2010 International CES」で発表したものである。放電による紫外線発生量の増大や,紫外線が蛍光体に当たって発光する際の光変換効率の向上,発光した光の取り出し効率の向上などにより実現した(Tech-On!の関連記事2)。

 PDPの発光効率が向上したことで,以下の二つの効果が得られるという(図6)。一つが,蛍光体の残光時間が従来品の約1/3に短くなったこと。もう一つが,PDPの発光制御手法として,従来は「暗→明」の順序で発光していたが,今回から「明→暗」の順序で発光できるようになったこと。これらにより,発光後の残光時間が短くなり,左右の映像の重なりを低減したという。なお,アクティブ方式のメガネについては,PDPの発光に合わせて液晶シャッターの開閉タイミングの精度を高めることで,クロストークを低減したという(図7)。

3D映像の符号化形式はMPEG-4 MVCを採用

 今回製品化したBDプレーヤー/レコーダーは,BDに格納された3D映像の再生に対応するため,3D映像の符号化形式にMPEG-4 MVCを採用する。これは,「パナソニックがBlu-ray Disc Association(BDA)に仕様を提唱したもの」(同社 ビデオビジネスユニット ビジネスユニット長の杉田卓也氏)という。

 MPEG-4 MVCは,左目用と右目用のフルHD映像信号を符号化する際に,左目用を基準映像としてそのまま記録する(図8)。右目用の映像については,基準映像と重複する部分は記録せず,差分のみを符号化するという。これにより,左右のフルHD映像をそれぞれ符号化する場合に比べて,約1.3倍の効率で符号化できるとする。右目用の映像を復号化する際には,「左目用の映像だけでなく,右目用の前後のフレームを参照することで精度を高めた」(同社の杉田氏)という(図9)。