中国ICT社が開発した,Androidを搭載したネットブック
中国ICT社が開発した,Androidを搭載したネットブック
[画像のクリックで拡大表示]
韓国Celrun社が開発したAndroidを搭載したSTB
韓国Celrun社が開発したAndroidを搭載したSTB
[画像のクリックで拡大表示]

 2010年1月初頭に開催された世界最大の家電展示会「2010 International CES」。3Dテレビ,電子書籍端末,スマートブック,エネルギー関連・・・。多くの話題で盛り上がるなかで,筆者が注目したテーマの一つが,米Google Inc.のソフトウエア・プラットフォーム「Android」を搭載した組み込み機器である。スマートフォンはもちろん,それ以外の組み込み機器がどれだけ登場してくるのか,そして日本メーカーから試作品などの公開はあるのか,という視点で会場を回った。

 当然の事ながら,広大な会場でAndroidを搭載したすべての機器を網羅できたわけではない。しかし,実際にかなりの数のAndroid搭載機器を見かけ,採用や開発が進んでいる,との印象を受けた。

 スマートフォンでは,Google社自らが開発・販売を手がける「Nexus One」を始め,米Motorola Inc.や韓国Samsung Electronics.,Co.Ltd.などがAndroid搭載製品を出展していた。中でも,Motorola社はブースのかなりの部分を割いて,Android搭載スマートフォン「DROID」シリーズを展示した。

 今回,出展が相次いだ電子書籍端末やタブレット型端末でもAndroidを採用している機種が多数見られた。例えば,台湾Micro-Star Int'l Co.,Ltd.(MSI)は,現在開発を進めているAndroidを搭載した電子書籍端末を展示した。米NVIDIA Corp.が2010年1月7日に発表した,SoC「Tegra」の最新版を搭載する。このSoCは,英ARM Ltd.のデュアルコア版「Coretex-A9」を採用した。NVIDIA社は,台湾の大手ODMが試作した,Tegra搭載のタブレット型コンピュータを多数展示した。

 米MIPS Technologies社も,同社のIPコアをベースにしたプロセサなどを採用した複数のAndroidベースの組み込み機器を会場周辺のホテルで展示した。韓国Celrun社が開発して韓国SK Telecom社が販売するIPTV対応のSTBは,その一つ。AndroidベースのSTBとしては初めて商用化される製品という。Sigma Design社のメディア・プロセサ「Sigma 8654」を搭載し,台湾KatDC社がUIを最適化したという。

 中国ICT社が開発したAndroidベースのネットブックもMIPS社のスイート・ルームで展示された。MIPSアーキテクチャを採用した自社製プロセサで動作するという。価格は129米ドルで,2010年内に発売されるという。

 もう一つ,MIPS社による展示で目を引いたのが,米Home Jinni社が開発したAndroidベースのメディア制御ソフトウエアを搭載したSTBである。DLNAクライアントの機能を搭載しており,DLNAサーバーが保存する動画などの再生を制御したり,動画に関連するメタデータを抽出してインターネットで関連情報を検索したりできる。Home Jinni社は,このソフトウエアを機器メーカーに向けて販売する。

日本メーカーの開発体制に馴染まない?

 こうした海外メーカー,特にアジア・メーカーの動きに対して,Android搭載機器の開発における日本メーカーのプレゼンスは相対的に低かった。船井電機がAndroidをベースにマルチメディア端末の機能を併せ持つユニバーサル・リモコンを披露したり,組み込み機器のシステム・インテグレータであるノバテックが,Androidに関わるいくつかのデモを披露していた。しかし,日本の大手メーカーから目立った展示は見られなかった。

 Androidを搭載した機器の開発において,日本の大手メーカーの動きが全般的に鈍いのには,いくつかの理由がある。例えば,1.Androidはそれなりに機能が充実したプラットフォームであるため,高付加価値戦略を採る日本メーカーにとってはかえって他社製品との差異化が難しくなる,2.Androidは組み込み向けソフトウエアとしては更新頻度が非常に高い。このため,品質重視の日本企業の開発体制に馴染みにくい--などだ。

 とはいえ,組み込み機器開発で世界的に起きているAndroid採用の機運は今後ますます高まっていくだろう。何より競争が激しく,開発のスピードが求められる分野でそれは顕著になる。
 国内では,シャープが2010年前半にAndroidを搭載した携帯電話機を投入することを表明しているが,それに続くメーカーがどんどん登場してくるのか。組み込み機器という分野で,“新たなガラパゴス”を作らないためにも,そうあって欲しい。