図1 Steven Chu長官
図1 Steven Chu長官
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 米DOE(Department of Energy,エネルギー省)長官のSteven Chu氏は米国時間2010年1月28日,DOEが電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の開発を強力に支援し,EV/PHEVの生産工場を米国に建設して雇用を増やす方針を示した(図1)。前日の米大統領Barack Obama氏の雇用政策を重視する一般教書演説を受けたもので,現在開催中の「2010 Washington Auto Show」(2010年1月27~31日)で講演した。

 Chu氏はまず,米国と中国の自動車生産台数の推移を例に取り,生産台数が急増する中国に対して,米国では急落していることへの危機感を示した。その上で,「自動車の生産工場を米国に取り戻さなければならない」(Chu氏,以下すべて同氏)と述べ,5領域の自動車技術開発を積極的に支援するとした。5領域とは「EV/PHEV」「次世代バイオ燃料技術」「先進内燃機関」「天然ガス利用」「燃料電池車」である。「これら技術の集約と競争の促進政策により,他国の石油への依存度を下げ,消費者の支出を減らし,先端の自動車開発や生産技術で世界をリードし,そして高品質な雇用を確保する」。

 また,Chu氏は,日産自動車への14億4800万米ドルの融資を完了したことを併せて報告した。この融資は,日産自動車の電気自動車や電池の工場改修や建設に当てられる。これにより「新たに1300人の雇用が期待できる」とした。現在,DOEは日産を含めた5企業に対して,総額85億9100万米ドルの融資を予定し,一部完了している。「全体で5万5000人の雇用を生み出し,守る」計画である。日産自動車以外の4企業は米Ford Motor Co.,米Tesla Motors, Inc.,米Fisker Automotive, Inc.,米Tenneco, Inc.である。

 DOEは2009年6月に,Ford社と日産自動車,Tesla社への融資を発表していた。現在まで,Ford社に59億3700万米ドル,Tesla社に4億6500万米ドルの融資を完了しており,今回の日産自動車で最初に発表していた3社の融資は完了したことになる。ただし,当初,日産自動車に対して16億米ドルの融資を予定していたが,今回の報告では約14億5000万米ドルとし,約1億5000万米ドルを減額した格好となった。残るFisker社には5億2900万米ドル,Tenneco社には2400万米ドルの融資を予定する。

 Chu氏は今回,注目しているEV/PHEVや充電インフラを手掛ける企業についても言及した。EV/PHEVでは米General Motors Corp.のPHEV「Chevrolet Volt」とTesla社のEV「Model S」を,充電インフラに関しては日産自動車とも共同実験している米eTec社を挙げた。eTec社は,11州に1万3000台の充電スタンドを配置し,5000台のEV/PHEVを使う計画の実証実験を始めている。

 このほか,将来技術として大容量のキャパシタに注目しているという。「キャパシタを使えば急速な充放電が可能。蓄電池の10倍の出力密度も期待できる。蓄電池とキャパシタを組み合わせた”ハイブリッド車”が,最上の実施例」と述べた。