図1 GridPoint社のデータ・ロガー
図1 GridPoint社のデータ・ロガー
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図2 充電インフラ用のアプリケーション
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 米GridPoint, Inc.は,電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の充電サービスに向けた車載用データ・ロガー「VCM(Vehicle Connectivity Module)」を試作した(図1)。EV/PHEVの充電インフラを手掛ける電力事業者に向ける。VCMは,電力事業者が電力需要に応じて,EV/PHEVの充電時間や充電量などを遠隔制御するといった「Vehicle to Grid(V2G)」のデータ収集端末という位置付けとなる。車載電池の充電状態や車両の位置情報,走行距離などの情報をGridPoint社のサーバーに収集し解析することで,電力事業者が数分~数十分間隔で車両の状態を把握できるようになるという(図2)。

 VCMでは,車両情報の通信に「Ethernet」を,サーバーとの通信に近距離無線仕様「ZigBee」と無線LAN,GSMを使う。位置情報の取得のため,GPS用アンテナの接続口も設けた。GridPoint社は過去にも同じ用途に向けた試作品を開発しており,従来品では車両情報の収集に車載LAN規格「CAN(controller area network)」を利用していた。変更した理由としてGridPoint社 Product ManagementのSeth Bridges氏は,「さまざまな候補を試している最中」と前置きした上で,「サーバーに情報を収集するという目的を達成するには,Ethernetを使ってTCP/IPプロトコルを利用するのが効率的」と考えたことを挙げた。

 ZigBee,無線LAN,GSMの3種の通信を利用するのは,車両の利用状況や場所に応じて通信を使い分けるためである。例えば住宅での充電時には,主にZigBeeを利用してスマートメーターと通信する。スマートメーターを介して,サーバーに情報を収集する。走行時などでは主にGSMの利用を,充電スタンドとの通信には無線LANを想定した。ただし,無線通信に関しても「いろいろ検討中」(Bridges氏)だという。「次世代送電網『スマートグリッド』での通信との整合性を考慮する必要がある」(同氏)ためである。

 GridPoint社は電力情報の管理用アプリケーションをLinux上で独自に開発した。電力事業者とその顧客は,充電状態や車両の現在位置,1日当たりの走行時間やCO2排出量,電力料金などを確認できる。電力情報の管理用アプリは,米Google, Inc.や米Microsoft Corp.なども開発している。これら企業との違いとしてGridPoint社のBridges氏は,対象とするユーザーが異なることを挙げた。「Google社やMicrosoft社は一般の顧客に直接,サービスを提供する。これに対して我々のアプリは,電力事業者に向けたものだ」(同氏)。

 GridPoint社はVCMを,他社の協力を得ながらも基本的に自社で開発したという。同社は2008年9月に,EV/PHEV向けの電力管理技術を手掛けていた米V2Green, Inc.を買収していた。VCMの開発は,主に元V2Green社の技術者が担当した。GridPoint社は今回のVCMを使った実証実験を既に始めており,現在までに12社の電力事業者とプロジェクトを進めているという。実験用の車両としては,米A123 Systems, Inc.のLiイオン2次電池を搭載した,「プリウス」の改造車などを使う。プリウス改造車を含めた実験用車両は300台程度あるという。

 GridPoint社は,2005年設立の新興企業。これまでに2億米ドル程度の資金を集めたとされ,米国で注目を集めている。従業員数は現時点で300人程度。米Goldman Sachs Group, Inc.などが投資している。