「第18回 ディスプレイサーチフォーラム」(1月27~28日,東京・品川)は,LEDについての講演と共に(Tech-On!関連記事1同関連記事2),液晶産業の中国生産シフトについて言及する講演が相次いだ。液晶テレビや液晶パネル部材の中国生産シフトが加速しており,さらに話題先行の感があった“液晶パネルの中国生産”も「うわさ話から現実味を帯び始めた」(ディスプレイサーチ 製造設備担当サブディレクターの秋山尊謙氏)。

 液晶テレビ・セットの生産は「近い将来,過半数が中国生産になる可能性が高い」と,ディスプレイサーチ 上級副社長シニアアナリストの田村喜男氏は予測する。液晶テレビ・セットの生産が中国に集中すると見る理由の一つとして,同氏は「金型費用の安さ」を挙げた。一般にセットの生産では金型費用が大きな負担となるが,中国の金型費用は日本の1/2~1/3で済むという。以前CRTテレビ・セットの生産が中国に集中したのも,金型の安さが大きな理由だったとする。

 液晶テレビ・セットの生産と共に,バックライト・ユニットやCCFL(冷陰極管)といった液晶パネルの後工程部材の中国シフトも加速している。さらに,ガラス基板,カラー・フィルタ,偏光板といった前工程部材を中国で生産する検討が進んでいると,ディスプレイサーチ FPD部材担当ディレクターの宇野匡氏は指摘した。例えばガラス基板では,中国IRICO社が第5世代対応のタンク(窯)を投資している。「既にサンプルの出荷が始まっており,ユーザーから良い評価を得ている」(宇野氏)という。カラー・フィルタでは,倒産した中国Shanghai SVA NEC Liquid Crystal Display Co., Ltd.の関連会社である中国SVA-FUJIFILM Opto-Electronic Materials Co., Ltd.の買収を,凸版印刷が交渉中であるとする。

中国を舞台に,第6~第8世代ラインの建設計画が相次ぐ

 中国は液晶テレビの巨大な潜在市場を持つ上に,テレビ・セットやパネル部材の生産シフトが進むことで,液晶産業における中国の存在感は日増しに高まっている。ここへ来て,液晶パネル・メーカーの中国投資の意欲も旺盛になってきた。

 液晶パネルは,生産工程の自動化が進んでいる上に部材コスト比率が高いため,労働コスト抑制による生産コスト削減の効果は小さい。それでも中国投資の意欲が旺盛になってきたのは,労働コスト以外の利点が明確に見えてきたからだ。ディスプレイサーチの秋山氏は,まず,「液晶パネルの生産から消費までのサプライ・チェーンを中国内に構築することが最も効率的」と指摘した。中国は,関税率が高く,法人税が低い。このため,液晶パネルを中国外から輸入してテレビ・セットを組み立てるよりも,中国内で生産した液晶パネルを使用した方がコスト面で有利になるという。同氏はこのほか,「為替変動が比較的安定なこと」「税制の優遇装置」「公的機関からの補助金・誘致」などを挙げた。