合同インタビューで壇上に上がったtorneの開発陣。左からJAPANスタジオ制作部 ゲームデザイナーの西沢学氏,ソフトウェアプラットフォーム開発部 開発リーダーの石塚健作氏,商品企画部の渋谷清人氏
合同インタビューで壇上に上がったtorneの開発陣。左からJAPANスタジオ制作部 ゲームデザイナーの西沢学氏,ソフトウェアプラットフォーム開発部 開発リーダーの石塚健作氏,商品企画部の渋谷清人氏
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 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は2010年1月22日,同社が3月に発売予定の「プレイステーション 3(PS3)」向けの地上デジタル放送視聴・録画キット「torne(トルネ)」の記者向け体験説明会を実施した。

 操作体験の後に行われた合同インタビューには,torneの開発陣から商品企画部の渋谷清人氏,JAPANスタジオ制作部 ゲームデザイナーの西沢学氏,ソフトウェアプラットフォーム開発部 開発リーダーの石塚健作氏の3名が壇上に上がった。以下,一問一等形式で質疑応答の様子を記す。

torneの商品コンセプトは?

渋谷氏 PS3はBlu-ray Disc再生機能を備えるなど,もともとホーム・エンタテインメントの幅を広げる製品と考えている。こういう中で「PS3でテレビにかかわるエンタテインメントをいかに広げられるか」を議論していく中でtorneの発想が生まれた。テレビを見て,撮って,楽しむ中で,PS3ならではの楽しみ方をどう提供できるのかを考えた。単なる地デジ・チューナーの提供ではなく,PS3で実現できる世界を広げることを狙っている。

開発にあたってこだわった部分は何か?

西沢氏 スピード感とレスポンスにこだわった。ゲームの制作と同様に,気持ちいい操作感を実現できるように,なるべく少ないボタン操作でレスポンス良く反応を返すようにした。もう一つ,(稼働中の画面が)リビングに溶け込んで「カッコイイ」と思えるようなデザインを心がけた。

開発で苦労した点は?

石塚氏 西沢の言った「レスポンスの良さ」「ストレスのない操作感」の実現でがんばった。PS3は(高い処理能力のあるマイクロプロセサである)Cellを載せてるんだから何でもできるんでしょ,と言われがち(笑)。だが,実際は簡単にはできないこともある。番組表の画面や番組リスト検索などで,レスポンス良く動くように気を使った。

開発はSCEだけか。ソニー本体との協力関係は?

渋谷氏 ハード,ソフトのすべてSCEのメンバーで作っている。ただ,録画機の開発に関してノウハウが足りない部分もあって,そのあたりでソニー本体に協力をしてもらった部分はある。

石塚氏 もともとBlu-ray Disc再生機能の開発で,ソニーとは協力関係にある。その関係は今も続いている。

今後のアップデート計画についてアイデアはあるか。「ウォークマン」や携帯電話機との連携はどう考えるか?

渋谷氏 アイデアはいろいろある。ネットワークを使った機能やゲーム的な要素も加えていきたい。他の機種との連携についても,ソニー・グループ全体での位置づけやユーザーの声を聞きながら進めていく。ただし,現在は「Day1(発売日)」に間に合わせるのに注力している段階。今後のアップデートは決まり次第お知らせしたい。

初年度の販売目標は?

マーケティング部 福嶋氏 申し訳ないが,販売数などの具体的な数字は公表していない。

1万円という価格ありきで開発したのか?

渋谷氏 最終的な決定は最近。PS3ならではの録画機能の提供を考えており,市場で10万円するBD録画機などと競争するつもりは無かった。PS3のユーザーに使ってもらえる適切な価格の目安として「このくらいで」という金額は当初からチームにはあった。

ゲーム中に予約録画できるようにするために,どのような工夫をしているのか?

石塚氏 PS3はゲーム機なので,ゲーム中はCPUの処理能力やメモリをほぼすべて,ゲームに割り当てるのが基本。ゲームの処理に影響を与えない小さな要求リソースで,予約録画機能が動作するように気を使っている。

GUIにキャラクターを使うなど,もっとゲームっぽい要素を加える方向性もあったのではないか。(コントローラーの)アナログ・スティックを使わず十字ボタンでの操作を選んだのはなぜか?

渋谷氏 企画当初はキャラクターを登場させるようなぶっ飛んだプランもあった。しかし「本当に使える機能」にまずは注力しようと考えを変えた。レスポンスの良い操作感を実現する基本形をまず作って,その上で(ネットワーク連携機能の)「トルミル」やPSP連携など,SCEらしい機能を加えていった。PS3にはネットワーク・アップデートの機能もあるので,今後も新たな機能を加えていきたい。アナログ・スティックは今後の機能のためにあえて使っていない。