日産のCarlos Ghosn氏(右)とKleiner Perkins Caufield & Byers社のRaymond Lane氏(左)
日産のCarlos Ghosn氏(右)とKleiner Perkins Caufield & Byers社のRaymond Lane氏(左)
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 デトロイト・モーターショーが開催中の2010年1月12日,日産自動車 社長兼最高経営責任者のCarlos Ghosn氏は米シリコンバレーを訪問した。「我々の顧客は,東海岸と西海岸に多い。そのため,ニューヨーク・モーターショーやロサンゼルス・モーターショーの方を重視している」(Ghosn氏)。同氏は,現地のビジネス団体「The Churchill Club」が開催したイベントで,シリコンバレーの有力なベンチャー投資企業米Kleiner Perkins Caufield & Byers社,Managing PartnerのRaymond Lane氏と対談した。

 自動車産業が次のフェーズに移行するには,Ghosn氏は新興国や電動自動車の市場が鍵を握っていると強調した。「今さら,新しいスポーツ・カーのコンセプトは業界を変身させるほどのブレークスルーにはならない」(同氏)。インドTata Motors社の超低価格車「nano」(Tech-On!関連記事)を例に挙げてGhosn氏は,日本の自動車産業においても高品質とはいえないものの低価格をウリにする自動車の製造から始まったことを指摘した。「インドでは歴史を繰り返しているので,我々にとって真剣に取り組むべきチャレンジだと思っている」(同氏)。新興国市場の顧客なら3000~4000米ドル程度の価格でベーシックな自動車を望んでいるが,こうした自動車を技術開発するには難しい問題があるという。「パリや東京に滞在している技術者に開発を頼んでも実現できない。物があふれているとはいえない生活に慣れたインド人の技術者に頼む必要がある」。

米国でも関心が高い電気自動車「リーフ」

 市場調査会社によれば,2020年に自動車市場の26%を電動自動車(ハイブリッド車などを含む)が占めるという。Ghosn氏は今後20~30年を見通すと,自動車産業にとって最も重要な技術は電池になるとみる。電動自動車の市場において,日産は電池を含めて,できるだけ電動自動車を製造する技術や販売ノウハウなどは社内で保有したいとした。「現在我々は,Renault─日産グループ内に約50万台の電気自動車,およびそこに搭載する電池の製造キャパシティを設立している」(同氏)。新しい電池技術を開発する場合,技術と資金が必要になる。そこで同氏は,技術と資金の両方があるシリコンバレー企業と協力していきたい考えだ。

 日産自動車は2010年度後半に,電気自動車「リーフ」を発売する予定である。米国市場では2009年10月ごろからリーフのWebサイトを開いている(Tech-On!関連記事)。このWebサイトへの登録者数は,「米国であっても」(Ghosn氏)既に3万5000人を超えたという。将来の重要な消費者になる若者は,ゼロ・エミッションの自動車への関心は高い。従って,日産が電動自動車のマーケティングを進めるために,こうした若者に重点を置くことになると同氏は語った。

 Ghosn氏によれば,電動自動車の市場展開のプロセスにおいて,電動自動車の製造から販売にいたるまで民間企業と政府機関が密接に協力し合っている状況が印象的だという。「私は今まで,こうした協力を見たことがない」(Ghosn氏)。同氏は,電動自動車の市場が立ち上がる最初の5年間程度は政府の支援が必要とみる。しかし,その後は適正な市場競争に移行するために,政府の支援がなくなることを同氏は希望しているという。