組み込み開発分野では,米Google Inc.の携帯電話機向けソフトウエア・プラットフォーム「Android」の広がりを報じる記事や,大手OSベンダーが買収されたニュースに読者の関心が集まった。また,多くの製品分野においてソフトウエアでの差異化が重要になってきたことを反映する記事もランキングの上位に食い込んだ。

▼ 2009年「組み込みソフト」記事ランキング

順位記事タイトル日付
1【ESEC】Android搭載の情報家電が続々登場,STBやデジタル・フォトフレームなど5/14
2Intel社がWind River社を買収,約8億8400万米ドルで6/4
3【インタビュー】NECがAndroidの技術専任チームを作った理由11/25
4ルネサス テクノロジ,携帯機器向けに「超解像」処理用ソフトウエアを開発6/15
5【CEATEC】CELL REGZAの類似番組検索機能,「Cellだからこそ実現できた」10/9
6三菱電機が組み込み機器向け描画IPコアを開発,「2GHz動作のCPUより速い」2/10
7NTTドコモの携帯電話機ソフト不具合,NEC製に続きパナモバ製も販売停止5/26
8ケータイ・カメラの進化を支えるソフトウエア・ベンチャー,モルフォの強みは何か7/2
9【MWC】「AndroidもWindowsも」,TI社がOMAP搭載開発キットの第2世代品を発表,「OMAP 4」の概要も2/18
10米TI社,光エネルギーによる自己発電機能を持つ,無線センサ・ネットワーク向け開発キットを発表1/23

(集計期間:2009年1月1日~12月15日)

 2009年には,国内でもNTTドコモがAndroid搭載端末「HT-03A」(台湾High Tech Computer Corp.(HTC)製)を発売した(関連記事1)。そのAndroidに,機器メーカーは熱い視線を注ぐ。Androidのソース・コードは大部分がApacheライセンスで公開されており,そのソース・コードを改変したり,商用製品に利用したりできるからだ。携帯電話機以外の分野でも,Androidを採用することで高機能な機器を効率的に開発できる可能性がある。

 システム・インテグレーター各社が5月の展示会でAndroid搭載機器の試作品を出展した様子をまとめた記事(関連記事2)が1位,NECが設立した「Android技術センター」に関するインタビュー記事(関連記事3)が3位にそれぞれランク入りした。Androidの携帯電話機以外への利用は徐々に広がりを見せており,12月にはNECビッグローブがAndroidを搭載したネット端末事業に進出するという発表もあった(関連記事4)。

OSベンダーの買収相次ぐ

 組み込みソフトウエア業界に大きな衝撃を与えたニュースの一つが,米Wind River Systems, Inc.の買収である。リアルタイムOS「VxWorks」や組み込みLinuxの事業を手掛ける組み込みOS大手の同社を,米Intel Corp.が約8億8400万米ドルで買収することを報じた記事(関連記事5)がランキング2位に食い込んだ。

 ランキングでは11位だったが,11月には組み込みLinuxの発展に貢献した米MontaVista Software, Inc.を,通信機器向けのマイクロプロセサなどを手掛ける米Cavium Networks社が5000万米ドルで買収するというニュースもあった(関連記事6)。半導体メーカーが自社のプロセサを売り込むためには,そのプロセサ上で動作するOSの提供が重要になっていることを示したといえるだろう。Androidのようなフル・スタックのオープンソース・ソフトウエアの台頭が影響した可能性もある。

機器の価値向上に貢献するソフトウエア

 今回のランキングは,ユーザーに新しい価値を提供する手段としてのソフトウエアの重要性がますます高まっていることも象徴している。例えば番組検索機能についてまとめた記事(関連記事7)が5位に入った「CELL REGZA」は,「機器が潤沢な演算性能を持つようになったときに,ソフトウエアでどのような付加価値を持たせられるのか」という課題に挑戦した機器といえるだろう。画像処理ソフトウエア・ベンチャーのモルフォへのインタビュー記事(関連記事8)が今回のランキング8位に入ったことにみられるように,ソフトウエアでもたらすべき付加価値を模索する動きがさらに進みそうだ。