図◎350〜400℃で接着できるPbフリーのV系ガラス。
図◎350〜400℃で接着できるPbフリーのV系ガラス。
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 日立製作所と日立粉末冶金(本社千葉県松戸市)は共同で,350~400℃と低温での接着が可能な鉛(Pb)フリーのバナジウム(V)系ガラスを開発した(図)。電子部品の組立工程などで,接着材として使える。日立粉末が,2009年12月24日にサンプルの提供を開始した。

 ICセラミックス・パッケージや水晶振動子,MEMS(Micro Electro Mechanical System)といった電子部品の製造においては,400℃以下で高い気密性を実現できる接着技術が求められる。現在,400℃以下で接着可能な接着材としては,フッ素を含有したPb系の低融点ガラスや貴金属を主成分とするはんだを使うのが一般的だ。しかし,前者は有害なPbが主成分であり,一方の後者は貴金属が高価である上,密着性を高めるために金属の下地層を必要とする。そのため,Pbフリーで低コストな接着材が求められているという。

 そこで両社は,低温で軟化し,かつ熱膨張を小さくできる可能性のあるV系ガラスに着目。既に2008年2月,Vを主原料とするガラスとして,420~500℃で接着できる製品を開発している。同製品は,ガラスを構成する元素の結合状態(ガラス構造)を3次元の網目構造にするとともに,網目内部にイオン半径の大きな元素を導入することで,気密性と耐水性・耐湿性を高めたのが特徴だ。

 さらに今回,ガラス構造の網目内部に,イオン半径の大きな元素だけでなく融点の低い元素を併せて導入した。これにより,水分子の影響を低減し,接着温度を低くできた。

 加えて新しい低融点ガラスでは,ガラス構造の網目の中に導入する元素の種類と数量を変えることで,熱膨張係数を(90~170)×10-7/℃の範囲で制御できる。通常,熱膨張係数を大きくすると耐水性や耐湿性が低下するが,ガラス構造の網目の中にガラス構造を制御することで,水分による影響を抑えられるという。 例えば90×10-7/℃以下の熱膨張係数に対しては,低融点ガラス粉末にフィラー粉末を混入することで,熱膨張係数を小さくする。

 これにより,セラミックスやガラス,半導体,金属など,熱膨張係数が異なるさまざまな材料と整合をとりやすい。高い気密性が求められるICセラミックパッケージなど,高機能電子部品の接着や被覆などへの展開も期待できるという。

連絡先:日立粉末冶金 高機能部材事業部 開発部
電話:0479-76-5571