「WiGigは次世代の無線LANだ。無線LANチップの大手メーカーが皆,我々の団体に加盟している」(Wireless Gigabit Alliance,President and Chairmanで,米Intel Corp. Director of Wireless PAN and Millimeter Wave StandardsのAli Sadri氏)。

 ミリ波使う超高速無線通信規格を策定するWiGigは,正式仕様「Version 1.0」が固まったことを発表した(Tech-On!関連記事)。Sadri氏はWiGigの仕様で,従来のIEEE802.11規格との互換性を尊重したという。例えば,IEEE802.11のMAC層には互換性がある。また,IEEE802.11と同様のセキュリティ技術を採用した。「WiGigの仕様書を見ると,IEEE802.11の拡張仕様であることが読み取れるだろう」(同氏)。

 WiGigはミリ波を用いるため,伝送距離が短い。このため,現行の2.4GHz帯や5GHz帯使う無線LAN方式と,相互補完の関係にあるという。現在IEEE802.11委員会では,60GHz帯のミリ波使う伝送仕様の策定部会として「TGad(タスクグループad)」が活動を開始している。WiGigの主導企業とTGadで活動する企業はほぼ一致しており,今後TGadの議論にもWiGigの活動が影響を与えそうだ(Tech-On!関連記事)。

 WiGigは次世代無線LANとしてのアプリケーションにとどまらず,他の無線規格の実現も視野に入れているという。「例えば,無線HDMIや無線PCI Expressを実現できるような,アダプテーション層を用意する」(Sadri氏)。こうなると,例えば無線版HDMIの実現を目指す「WirelessHD」といったほかの規格との競合もありそうだ。

 今後のスケジュールに関して,2010年第1四半期にWiGig Allianceの会員にVersion 1.0仕様を配布する。また,2010年第2四半期にアダプテーション層のプロトコルを公開する予定である。2010年から2011年にかけて,互換性試験などの手順を定める。WiGig用チップなどの量産は,その後になると見込む。ただし,先行して関連チップの製品化に乗り出す企業が登場する可能性があるという。