NECエレクトロニクスは,微細なトランジスタで発生するバラつきの一つである,ランダム・テレグラフ・ノイズ(RTN)の分析で新手法を考案した(ニュース・リリース)。RTNが発生すると,トランジスタの特性が動作中に変化し,最悪の場合,誤動作に至る。製造起因のバラつきが時間的に変化しないのに対して,RTNは時間的に変化するため,設計者にとっては,より厄介な問題となる。

図1●ランダム・テレグラフ・ノイズとは NECエレのデータ。
図1●ランダム・テレグラフ・ノイズとは
NECエレのデータ。
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 これまで製造起因のバラつきに注意が払われていたのは,RTNの影響が相対的に小さかったためである。しかし,今回の手法を考案したNECエレの竹内潔氏(LSI基礎開発研究所 主幹研究員(研究マネージャー))によれば,22nm以降の微細プロセスでは,RTNの影響が製造起因のバラつきのそれを上回る。また,製造バラつきに関しては,最後に残ったランダム・バラつきの原因が解明されつつある(Tech-On!関連記事1)。この意味でも,バラつきの研究の焦点は,RTNなどに移行すると見られる。

すでに定式化に成功

 RTNは,トランジスタのチャネルを移動するキャリア(電子や正孔)が,ゲート絶縁膜などに存在するトラップ(トラップ準位)に捕獲されたり,トラップから放出されたりする現象を言う(図1)。RTNが発生すると,しきい電圧などのトランジスタの特性が変わる。竹内氏らは,この現象の分析に以前から取り組んでおり,2009年6月の国際会議「2009 Symposium on VLSI Technology」では,RTNの定式化に成功したことを発表している(Tech-On!関連記事2)。