NECは,動作合成ツールを核としたC言語ベースのLSI設計システム「CyberWorkBench(CWB)」のプライベート・セミナを東京にある同社の本社で12月7日に開催した。CWBは同社の中央研究所が開発し,NECシステムテクノロジーが2006年7月から市場での販売を始めた(Tech-On!関連記事1)。2009年10月1日から市販事業の主管組織がNECシステムテクノロジーからNEC本体の組込みシステムソリューション事業部に移った。

図1●2度目の動作合成チャレンジ 講演者(右)はQNETの杉本佳也氏。日経BPが撮影。スクリーンはQNETのデータ。
図1●2度目の動作合成チャレンジ
講演者(右)はQNETの杉本佳也氏。日経BPが撮影。スクリーンはQNETのデータ。
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図2●CWB評価結果のまとめ QNETのデータ。
図2●CWB評価結果のまとめ
QNETのデータ。
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 今回のセミナでは3社のCWBユーザーが講演した。登壇順に,富士通九州ネットワークテクノロジーズ(QNET),日本ビクター(Tech-On!関連記事2),日立製作所中央研究所(同3)である。QNETはひと月ほど前に米Mentor Graphics Corp.の動作合成ツール「Catapult C Synthesis」のユーザーとして導入事例を発表しているが(同4),今回の講演者とは担当製品が違うという。Catapultのユーザーはモバイル機器向けチップ,今回のCWBユーザーは伝送装置向けのチップを担当している。

以前に導入失敗の苦い経験

 QNETから今回登壇したのは,杉本佳也氏(システムロジック開発センター 第二開発部)である。同氏らが動作合成ツールを評価したのは,今回が初めてではない。2004年にSystemC入力の市販品の導入を試みたが,失敗したという苦い経験を持つ(図1)。サイクル精度での設計が思うようにできない,SystemCの習得が困難,動作合成用とは別に検証用のソース・コードが必要など,動作合成のデメリットがメリットより目立った。

 時が経ち,開発対象が大規模化・複雑化したことで,動作合成ツールの導入を再び検討することになった。今回は,伝送のハードウェア設計でよく出てくる,IPトランスポートFPGAのパケット多重化回路を題材にして,CWBの評価を行った。評価では,以前にRTLで設計した結果と比較している。なお,CWBを使ったのは,日頃,スクラッチからRTL設計しているエンジニアである。

 杉本氏によれば,同回路は動作合成には不向きな回路で,評価結果は厳しいものになると予想していたという。しかし,実際に評価してみると,「△や×がない良い結果だった」(同氏)。特に,動作合成時間や入力記述コード量,検証速度の点では,期待を大きく上回った。例えば,検証速度はRTL比で最大467倍高速に,入力記述コード量はRTL比で最大85%減少した(図2)。