日立,パナソニック,東芝,ミリ波通信モジュール戦略を明らかに
日立製作所,パナソニック,東芝は,60GHz帯のミリ波を用いた近距離無線通信モジュールの開発状況について明らかにした。各社とも,送受信ICを独自開発する方針で,アンテナを含む小型モジュールの試作を進めている。家庭内ネットワークの高速無線伝送や,街角のKIOSKダウンロードといった用途に向けて,今後数年以内に実用化する考えだ。
HD動画伝送やKIOSKダウンロードに
2009年11月24日にブロードバンドワイヤレスフォーラムが開催した「家庭内ワイヤレスシステムに関するシンポジウム」で,3社の担当者が明らかにしたもの。会場付近のブースにおいて,試作したICやモジュールを公開した。
日立製作所は,壁掛けテレビやBlu-ray Disc録画機間など,家庭のAV機器でのHD動画伝送用途を想定する。「家庭内のHD無線伝送は,既にほかの伝送手法を使った製品が登場しており,ビジネスとして確立している。まずはこうした市場で,ミリ波の高速性が生かされるのではないか。その後,携帯機器などの市場が出てくる」(日立製作所 コンシューマエレクトロニクス研究所 主管研究員の野田正樹氏)。
日立製作所は既に,CMOS製のレシーバICや, ICとアンテナを実装したモジュールを試作している。レシーバICは,130nmのCMOS技術を使ったもので,VCOとミキサ,LNAなどを集積する。変調方式にASKを使い,1.5Gビット/秒のデータ伝送が可能なことを確認している。モジュールでは,アンテナとの接続部やバンプの構造を工夫することで,「チップからアンテナまでの挿入損失を1dB程度に抑えた」(日立製作所)という。試作したモジュールでは,受信用のアンテナ・アレイと,送信用のアンテナ・アレイを別に用意した。共通のアンテナを,アンテナ・スイッチを用いて送受信で切り替えて利用する場合,アンテナ・スイッチの挿入損失の影響が大きくなる。これを避けるため,アンテナ・スイッチを使わない構成にしている。現在の試作システムでは,ベースバンド回路やMAC制御回路はFPGAなどで構成しているという。将来的には集積度を高めた1チップの送受信ICの実現を想定している。
携帯電話機への搭載を視野に
一方でパナソニックは,携帯機器での用途を強く志向している。「携帯電話機に載せるために開発している。そのため,CMOS技術を使った1チップICを目指している」(パナソニック)。携帯電話機などに組み込んで,音楽や動画コンテンツをKIOSK端末などからダウンロードして利用することなどを想定する。同社によれば,1Gビット/秒のミリ波通信モジュールを使った場合,コンテンツのダウンロードに要する時間は,640MバイトのCD1枚が約5秒程度で,2時間のSD画質の動画の場合で9秒程度で済むという。
会場では,実際に60GHz帯を使ったデータ通信を実演した。数十cmの距離において,画像データを830Mビット/秒程度で伝送した。現在のシステムで用いているICは,アナログ・フロントエンド部(LNA,ミキサ,局部発信器,アンプ,逓倍器など)のみCMOS技術で製造しているが,将来的にはMAC制御回路やベースバンド処理回路まで含めて1チップ化する方針だ。会場では,1チップICの利用を想定した10mm角のミリ波通信モジュールのモックアップも展示した。モジュールに実装したアレイ・アンテナは4素子である。「アンテナの素子数はアプリケーションや使い方によっても変わってくる。4素子でも,かなりの用途に適用できる」(パナソニック)。消費電力に関しても,OOKといった比較的簡易な変調方式を活用すれば,携帯電話機に乗せられる程度まで低減できる見込みという。
東芝は,半導体チップのボンディング・ワイヤをアンテナとして活用したミリ波通信用ICの開発を進めている(Tech-On!の関連記事)。CMOS技術を活用するほか,専用アンテナなどが不要になることから1チップ化に向くとする。会場では,1チップの送受信ICのイメージを展示した。東芝は,「デジタル機器の完全コードレス化」を目指し,そのための高速伝送手法としてミリ波通信に期待しているという。
東芝は同様に,デジタル機器のコードレス化を実現する技術としてワイヤレス給電にも注力していることを明らかにした。薄型テレビに壁から無線で電力供給したり,机の上のパソコンに無線で給電するといった用途を想定する。当初の目標としては,10Wの電力を数十cm伝送することとした。このため,電場・磁場共鳴型のワイヤレス給電技術の検討などを進めているという。













