JFEスチールは2009年11月19日,インドの鉄鋼メーカーJSWスチール社(JSW STEEL,本社:Mumbai)と広範囲にわたる分野で協力し,相互の利益拡大を図る包括提携契約に調印したと発表した。

 今回の提携に至ったのは,インドでの生産能力拡大と技術力向上を目指すJSWスチール社と,高級鋼製造技術や省エネルギ/環境対策技術を持ち,高成長のインド市場で供給拠点を確保したいJFEスチールの利害が一致したため。両者は,まずは自動車向け鋼材で提携するという。JFEスチールは,熱延鋼板/冷延鋼板/溶融亜鉛メッキ鋼板の製造技術の供与や原板供給を行い,両社で自動車分野への応用エンジニアリングや製品開発といったサービスを共同で実施する。具体的な内容は,関係当局の承認を得ながら項目ごとに検討し,その上で個別に契約を締結する。将来的には,自動車分野以外の鉄鋼製品の製造や,省エネルギ/環境対策,品質向上や歩留まり改善対策,JSWスチール社の設備能力診断,相互出資など広範な分野での協力の可能性を検討していく。

 JSWスチール社は粗鋼生産能力がインド最大の鉄鋼メーカー。粗鋼生産能力を現在の780万t/年から2011年には1100万t/年に拡大する計画を持つ。2009年度第2四半期の粗鋼生産量は前年同期比の54%増,鋼材販売数量は同74%増となっている。主要製品は,熱延鋼板,冷延鋼板,溶融亜鉛めっき鋼板,線材,棒鋼など。高付加価値製品のメッキ鋼板,カラー鋼板でもインド最大の輸出企業である。2010年3月には最新鋭の広幅熱間圧延工場が稼働する予定で,さらに2020年までにウエストベンガル州とジャルカンド州にそれぞれ1000万t/年の新規一貫製鉄所を完成させる計画を進めるなど,積極的な事業展開が目立っている。二つの一貫製鉄所が稼働すれば,粗鋼生産能力は3200万t/年になる。JSWグループは,鉄鋼事業のほか,鉱業や電力,産業用ガス,港湾運営,アルミニウム,セメント,IT関連事業を運営している。