米Apple社が2009年10月下旬に発売した「Magic Mouse」。筐体上面にタッチ・センサを内蔵して,ボタンやクリック・ホイールなど目に見える部品を排している
米Apple社が2009年10月下旬に発売した「Magic Mouse」。筐体上面にタッチ・センサを内蔵して,ボタンやクリック・ホイールなど目に見える部品を排している
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 米Apple Inc.は,2009年10月下旬に筐体の上面をタッチ・センサで覆った新発想のマウス「Magic Mouse」を発表した。日経エレクトロニクスでは,このマウスを技術者の協力を得て分解,解析した。今回から数回に分けて,その様子を紹介する。

 Magic Mouseはマウス上面に静電容量式タッチ・センサを内蔵することで,目に見えるボタンやスクロール・ホイールなどを排している。実は,ボディ全体を押し込むとクリックできるようになっており,その際に左右どちらの指を使ったかをタッチ・センサで判別して,左右クリックを検知し分ける仕組みとなっている。

 Magic Mouseはそのほか,指を1本もしくは2本使う,いわゆる「ジェスチャ操作」に対応する。具体的には,指1本を動かすと,画面が上下左右にスクロールする。キーボードの特定のキーを押しながら,指1本を動かすと画面が拡大・縮小する。さらに指二本でのスワイプ動作(素早く横に払う)が,Webブラウザなどのページ送り/戻しに割り当てられている。

 マルチタッチ対応のタッチ・パネルを使ったジェスチャ操作は,Apple社が「iPhone」で導入した操作手法である。このため,iPhoneのジェスチャがMagic Mouseにそのまま導入されたように勘違いしがちだが,実は違う。例えば,iPhoneで特徴的な,ピンチ操作(2本の指の間隔を広げたり,縮めたりする)で画像の拡大・縮小などを行う操作は,採用されていない。

 ユーザー・インタフェースを専門に開発しているソフトディバイスの八田晃氏は,「Magic MouseのジェスチャはiPhoneとはかなり異なり,MacBookなどノート型パソコンが採用しているジェスチャに近い」と指摘する。ただし,MacBookではピンチ操作に対応するほか,指3本や4本を使うジェスチャ操作まで取り入れているが,Magic Mouseでは2本指の操作までに留めている。対応するジェスチャの数も少ない。これは,マウスで可能な操作を重複させる必要がないという理由が考えられるほか,「タッチ・センサの分解能や検知領域の広さなどを勘案して,ジェスチャを取捨選択しているのだろう。Apple社自身もまだ,使い方を試行錯誤している途中なのではないか。新たなジェスチャが今後,徐々に追加される可能性はある」(八田氏)と推測する。

―― 次回へ続く ――

【お知らせ】この分解調査の詳細は日経エレクトロニクス 2009年11月16日号 NEレポート「Apple 社のMagic Mouseを分解,特殊なセンサで感度向上か」に掲載しています。

Magic Mouseの上面はポリカーボネート製と思われる樹脂で覆われる。テーパーを付けるようにえぐられた形状のボディ下面は,アルミ合金製である
Magic Mouseの上面はポリカーボネート製と思われる樹脂で覆われる。テーパーを付けるようにえぐられた形状のボディ下面は,アルミ合金製である
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Magic Mouseの設定画面。左右のクリック検知などを入れ替え可能になっている。また,設定中は画面右側に,ジェスチャ操作を解説するビデオが流れ続ける
Magic Mouseの設定画面。左右のクリック検知などを入れ替え可能になっている。また,設定中は画面右側に,ジェスチャ操作を解説するビデオが流れ続ける
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