ランキングではVAIO Xの分解に紛れてしまいましたが,今週の大きな話題に,NTTドコモやソフトバンクモバイルのケータイ新製品がありました。それらの製品を見て,ある記者が漏らしたのが冒頭の感想です。筆者も関連記事をじっくり読んでみましたが,確かに猛烈な購買意欲はかき立てられませんでした。そもそも,それぞれの製品を買うと,どんな楽しさが待っているのかピンと来ません。感覚的で恐縮ですが,わくわくするような展望が広がる代わりに,何だか「閉じた感じ」がするのです。
特にその印象が強かったのが,今回一番の注目株だった「セパレート・ケータイ」です。携帯電話をディスプレイとキーボードに分離して使えるというコンセプトは興味深く,これをキッカケに様々な周辺機器が連携し合う新たな利用環境が生まれるかもしれません。実際,開発メーカーの富士通は,「プロジェクターユニット」にとどまらず,“スキャナー”“プリンター”“ゲーム・コントローラ”“キーボード(ピアノの鍵盤)”などのオプションを想定しているとのこと。ところが,肝心の実現への道筋がどうもハッキリしません。「製品化時期については『まだ何も決まっていない』」と,はなはだつれない答えです。これではせっかく膨らんだ想像も,あえなくしぼんでしまいます。
筆者がこう感じる背景には,世界の携帯電話機市場の趨勢があります。今,世界で起きているのは,携帯電話機の魅力を高めるために,いかにして他者の力を借りるのかという競争ではないでしょうか。米Apple社のiPhoneが好調な一因は10万を超えるアプリケーション・ソフトウエアにあることは,累計で20億を超えたダウンロード件数からも明らかです。Sony Ericsson Mobile Communications社が「XPERIA X10」,Motorola社が「Droid」といった話題の製品を投入できるのは,Google社のソフトウエア基盤「Android」を利用することで,自社ならではの部分に開発資源を集中できたからでしょう。
ところが「セパレート・ケータイ」では,こうした協力の構図が今のところ見えません。コンセプトに賛同するサードパーティがどれくらいあるのか,どこまで多彩な周辺機器が登場しそうか,全くの未知数です。むしろ,アイデア自体は1年前に公開していたにも関わらず,そうした話が出てこないからには,「やっぱり1社で全部揃えるのか」と訝ってしまいます。
しばしばガラパゴス諸島に見立てられる日本の携帯電話機市場は,「技術や製品,コンテンツなどが日本市場に留まる『引きこもり』状態」にあるそうです。今週発表されたいくつもの携帯電話機を見ると,どこのメーカーも,日本どころか自社の中に引きこもって,全てを作り上げようとしているかに感じます。長年の垂直統合体制に慣れた日本企業は,他者を次々に巻き込んでいく仲間作りに馴染めないのでしょうか。
ニュース(11月9日~13日)
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