任天堂の岩田聡代表取締役社長がWii向けの有料動画配信サービス「シアターの間」を2009年内に開始すると述べたのは,日本民間放送連盟主催の第57回民間放送全国大会の講演(2009年10月27日)の中だった。そして,放送事業者に積極的な参加も呼びかけた。それだけ,放送事業者とのよりよい関係構築を重視している表れなのだろう。

 岩田社長は「任天堂の売り上げの8割以上が海外からのものであることが示すように,ゲーム,アニメ,映像などの日本のクリエーティブは海外で受け入れられる」と語り,将来的にはシアターの間で海外向けの映像配信も検討していくという。また,「全国の放送事業者が過去に製作したアーカイブの配信も可能で,興味のある事業者はぜひコンタクトして欲しい」と,放送事業者に積極的な参加を呼びかけた。

 課金システムにはWiiで有料ソフトの販売や追加アイテムの販売で利用している小額課金の仕組みを利用する。利用者が見たいコンテンツを検索して探すだけでなく,お薦めコンテンツを推奨する機能も用意する。月額課金などの定額制ではなく,コンテンツごとの都度課金のサービスとして提供する。

 講演では,2009年5月に広告モデルで無料提供を開始した動画配信サービス「Wiiの間」の利用状況についても触れた。現状について「手ごたえはあるが未熟」と表現し,10月26日時点の利用者が93万世帯,248万人であると語った。

満を持して登場


 任天堂が,ゲーム機「Wii」向けの有料動画配信サービス「シアターの間」で,先行するソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション 3向け動画配信や,欧米で有料動画配信の販売チャンネルとして大きな存在感を持つAppleのiTunesに対抗するには,「Wii」というプラットフォームが持つ強みを最大限に生かし,コンテンツやサービス内容で差異化を図る必要がある。