日産自動車は,2009年度上期(2009年4~9月期)の連結決算を発表した。売上高は3兆3833億円(前年度同期比30.5%減),営業利益は948億円(同50.5%減)で減収減益だったが,期初想定よりも落ち込みの幅は小さかったという。先進国における各国政府主導の市場刺激策や,中国市場の上昇基調が業績を下支えした。

 2009年度4~9月期の全世界における連結販売台数は162万3000台で,前年度同期の190万2000台から27万9000台(14.6%)減少した。地域セグメント別の販売台数は,日本が28万5000台(前年度同期比10.3%減),北米が51万9000台(同22.2%減),北米のうち米国が40万6000台(同21.4%減),欧州が24万9000台(同18.5%減),中国が33万2000台(同19.3%増),その他が23万8000台(同28.5%減)である。中国だけが販売台数が増加している。

 日本,北米,中国に関しては,日産自動車の増減率と全需(同社推計)の増減率に大きな差はない。だが,欧州に関しては,全需の減少率が14.7%であるのに対し,同社の減少率は18.5%と落ち込みが大きかった。その理由は,欧州市場の中で同社のシェアが比較的高いロシア市場において,需要が急速に減退したことだ。また,その他市場に関しても,全需の減少率が6.7%であるのに対し,同社の減少率は28.5%と落ち込みが非常に大きかった。これには,インドが関係している。インド市場全体は拡大基調にあるが,同社のインド市場のシェアはそれほど大きくなく,市場拡大による恩恵をほとんど受けられなかったという。

 2009年度第2四半期(2009年7~9月期)の業績と販売台数は,売上高が1兆8685億円(前年度同期比25.9%減),営業利益が833億円(同25.4%減),全世界の販売台数は90万1000台(同6.8%減)と,同年4~6月期に比べていずれも減少率が縮小した。

 先進国の市場刺激策が打ち切られるなどリスク要因もあるが,販売が基本的に上向いていることなどから,同社は2009年度通期(2009年4月~2010年3月期)の業績見通しを上方修正する。売上高は7兆円(2009年5月12日発表の前回見通しでは6兆9500億円),営業損益は1200億円の利益(同1000億円の損失),純損益は400億円の損失(同1700億円の損失)である。

 営業損益が2200億円も改善する理由は,販売が当初見通しよりも上向いていることと,中古車の価格が“危機”前の水準に戻りつつあることである。販売面は,当初見通しでは2000億円の減益要因と見ていたが,この額が800億円に縮小する。また,中古車価格が一時期よりも高くなっていることから,前年度同期に計上していた「リース車両残存価値リスクに対する引当金」が今期は不要となったほか,価格を低めに見積もっている分は実勢価格との差を利益として計上できるため,1300億円の増益効果が見込めるという。一方,為替に関しては,当初見通しで1700億円の減益要因としていたのを2000億円に引き上げた。以上,販売面で1200億円のプラス,中古車価格関連で1300億円のプラスとの差し引きで営業損益が当初見通しに比べて2200億円の改善になるという。