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シャープがケータイ開発で構造・熱解析を導入できた三つの要因,ダメ押ししたのは通信事業者の一言

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2009/10/28 19:49
宇野 麻由子=日経エレクトロニクス
図 シャープ 生産技術開発推進本部 副本部長の二上範之氏
図 シャープ 生産技術開発推進本部 副本部長の二上範之氏
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 電子機器の薄型・小型化が進むにつれて,放熱設計の難易度が高まっている。設計の初期段階で熱流体解析を使ってシミュレーションすれば結果的に設計開発期間を短縮できるであろうことは容易に想像できる。一方で,各設計者が使える解析のための環境整備や社内の体制作りなど,準備に手間が掛かることも明らかだ。現場の設計者から反対の声も強く,導入に踏み切るのは容易ではない。

 こうした状況をいかに克服してきたのか――シャープ 生産技術開発推進本部 副本部長の二上範之氏は,2009年10月27日にシーディー・アダプコ・ジャパン(CDAJ)が開催したプライベート・セミナー「CDAJ CAE Solution Conference 2009」において,「シャープ流デジタルエンジニアリングにおけるシミュレーション技術の取組み」と題して基調講演を行った。

 シャープでは,熱流体や振動などの解析を,機構設計担当者自らが行っている。二上氏によれば,現在,同社の並列計算機使用時間がここ数年で,飛躍的に伸びているという。2005年に比べて,2008年の計算時間は約10倍に達した。薄型テレビや携帯電話機でほぼ全機種をシミュレーションしたいという要望が強く「計算資源が不足している」(二上氏)というほどの盛況ぶりだ。

当初は設計者が猛反対


 ただし,シミュレーション導入は当初から順調に進んだわけではない。同社が製品レベルでの熱解析に取り組んだのは,パソコン「メビウス」シリーズからという。1998年ごろのパソコンは熱問題がネックとなっており,ほぼ全機種で熱解析を行っていた。ところが,その後,他の製品では遅々として導入が進まない。携帯電話機の設計に3次元設計と熱解析のシミュレーションを導入しようとしたところ,「設計データは2次元でいい」「シミュレーションなんてやらなくても分かる」と設計者から猛烈な反対を受け,結局2000年半ばまで導入は進まなかった。

 事態ががらりと変わったのが,2000年後半である。主な要因は三つある。一つは,携帯電話機の設計開発において,外部メーカーの短納期試作サービスを利用したいという要望が出てきたこと。そのためには,3次元設計データが必要だった。二つめは,携帯電話機の薄型・小型化が進んだことで,2次元設計では部品のぶつかりが激増,手戻りが多発するようになったためである。そして三つめの要因,ダメ押ししたのが移動体通信事業者からの一言,「シミュレーションもやってくれ」だった。これらの結果,まず3次元設計が導入され,続いて熱解析のシミュレーションも行われるようになったという。

 同社では,いわば「熱流体解析の素人」である機構設計担当者がシミュレーションを自分でこなす。そのため,各種設定などは半自動化を進め,1晩で解析できるようなシミュレーション環境を整えているという。例えば,設計初期段階の構想設計で行うシミュレーションは,1日2回できる時間を目安にしている。不慣れな人であっても,1日に1回はシミュレーションできると見込む。

「ツールが単なるお絵かきに…」会場から同意の声


 現在,二上氏が「気にしている」のは,シミュレーションの使いこなしだ。構造や電装部品など,未定項目の多い構想設計の段階で,詳細なシミュレーションを行っている例をしばしば見かけるという。「細かくシミュレーションしても,結局結果が出ないので無意味」(二上氏)。こうした発言に対して,会場の聴講者からも「ツールが単なるゲーム,お絵かきになっている場合がある」という同意の声が上がった。

 こうした状況への対策として,二上氏が力を入れているのが「人材育成」だ。エンジニアに必要なのは(1)基本的な設計力と(2)ツールの利用などの応用力の二つである。「特に重要なのは基本的な設計力。最近の若手は修士課程卒で優秀だが,設計の基礎を知らない。こういう人材をそのままシミュレーション部門に“隔離”してしまうと,とんでもない人材に育ってしまう」(二上氏)。今後は,デジタル・エンジニアリングを強化するために,金型などの現実を把握できるような教育にも力を入れていきたいとした。

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