エポキシ樹脂系の補強材を使った鋼製部品。左は発泡・硬化後,右は発泡・硬化前。黒色の部分は,樹脂製の支持体。
エポキシ樹脂系の補強材を使った鋼製部品。左は発泡・硬化後,右は発泡・硬化前。黒色の部分は,樹脂製の支持体。
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バンパ・レインフォースメントに適用した例。
バンパ・レインフォースメントに適用した例。
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Bピラーに適用した例。
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 アイシン化工(本社愛知県豊田市)は,鋼製部品にエポキシ樹脂系の補強材を使うことで車両の衝突安全性向上と軽量化を両立させた事例を「第41回東京モーターショー」(一般公開日:2009年10月24日~11月4日)で展示した。バンパビームやフロント・サイドメンバ,ピラーといった車両骨格部品全般に適用できるという。

 今回用いた補強材「ACテロコア1811」は,エポキシ樹脂系の構造用発泡体。鋼製部品に充てんして硬化させると最大荷重が大幅に向上するので,衝突安全性を高められる。加えて,所望の衝突安全性を確保するために必要な鋼板の使用量(厚さや枚数)が少なくて済むので,軽量化も可能になる。

 具体的な活用法としては,複数枚の鋼板を溶接した中空部材において鋼板同士のすき間に充てんしたり,部材の内部に樹脂製の支持体を配置した上で鋼板と支持体のすき間に充てんしたりする。部材単体の段階では発泡・硬化させず,車体全体の電着塗装時の高温(170℃前後)を利用して発泡・硬化させる。電着塗装の工程を利用できるように補強材の物性を調整した。

 部品の内部全体に充てんせず,上記のようなすき間に限定的に充てんするのは,この補強材の単位質量当たりのコストが鋼板に比べて非常に高いため。部品を設計・試作してから強度が足りない部分に加えるという使い方も可能だが,この補強材を使うという前提で部品を設計した方が,衝突安全性向上や軽量化といった効果を高めやすいという。

 この補強材は,もともと独Henkel社が開発したもの。独Audi社など欧州の自動車メーカーを中心に採用が進んでいるが,日本の自動車メーカーによる採用事例はない。アイシン化工は特許ライセンスの実施許諾契約をHenkel社と締結しており,今後は日本の自動車メーカーや部品メーカーなどに向けて提案・供給していく。