竹繊維やひまし油由来ポリオールなどから造ったサイドドアトリム
竹繊維やひまし油由来ポリオールなどから造ったサイドドアトリム
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ポリ乳酸(PLA),ジュート,ポリアリレートから造った射出成形部材
ポリ乳酸(PLA),ジュート,ポリアリレートから造った射出成形部材
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ひまし油由来ポリオールなどから造ったクッションと,PLA複合繊維で造った表皮材
ひまし油由来ポリオールなどから造ったクッションと,PLA複合繊維で造った表皮材
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 三菱自動車は,植物由来樹脂で製造した内装部品を試作し,「第41回東京モーターショー」(一般公開日:2009年10月24日~11月4日)で展示した。再生可能な植物原料を使用することで,自動車のライフサイクル全体における二酸化炭素排出量を削減するのが狙い。今後は,量産車種への適用を目指す。

 同社が展示した内装部品は,以下の通り。
(1)竹繊維とひまし油(トウゴマの種子から得た油)由来の原料を含むポリウレタン(PU)で造ったサイドドアトリム
(2)ひまし油由来の原料を含むPUで造ったクッション
(3)飼料用のトウモロコシを原料とするポリ乳酸(PLA)などから造った射出成形部材
(4)PLAを主原料とする複合繊維で造った表皮材

 (1)は,BASF INOAC ポリウレタン(本社愛知県新城市)と共同で開発したもの。植物由来原料として竹繊維,ひまし油由来ポリオール,ヤシ油グリセリンを使用し,さらに石油由来ポリオールや石油系のジフェニルメタン・ジイソシアネートを加えて,竹繊維強化PUとする。ポリプロピレン(PP)製のサイドドアトリムと比較した場合,ライフサイクル全体(原料採取から自動車製品の廃棄まで)における二酸化炭素の排出量を約3割削減できる可能性があるという。今回試作・展示したのはサイドドアトリムだが,ほかに各種ボード部材,トリム部材,天井などの内装部品への適用を想定している。

 (2)は,難波プレス工業(本社岡山県倉敷市)と共同で開発したもの。植物由来原料としてひまし油由来ポリオールを使用し,さらに石油由来ポリオールや石油系のジフェニルメタン・ジイソシアネートを加えることでPUとする。シートやヘッドレストへの適用を想定している。

 (3)は,クラレ,水菱プラスチック(本社岡山県倉敷市)などの協力を基に開発したもの。植物由来原料としてPLAペレット,ジュート(コウマ,インド麻)短繊維を使用。さらに石油系で耐熱性の高いポリアリレートの短繊維を加えてコンパウンドとし,射出成形用のペレットを造る。ジュートやポリアリレートを配合することで,PPよりも優れた耐熱性や耐衝撃性を実現できるという。

 (4)は,東レと共同で開発したもの。複合繊維とすることで,PLA100%の表皮材よりも柔軟性や耐久性が向上したという。内装のあらゆる表皮材への適用を想定している。

 植物由来樹脂を量産車種に適用する上での最大の課題は,コストだという。例えば射出成形向けPLAの場合,素材そのもののコストに機械的特性の改質にかかるコストが上乗せされるため,価格は1000円/kgを上回ることが多い。これを量産効果などによってどれだけ低減できるかということが採用拡大に向けたカギとなると同社はみている。

 さらにPLAに関しては,可食資源であるトウモロコシを原料として用いているため,食糧との競合という課題も抱えている。三菱自動車が今回使ったのは飼料用トウモロコシだが,飼料用とはいえ可食資源であることに変わりはない。こうした課題もあって,PLA製内装部品の実用化については,今後も慎重に検討していくという。