ケナフ/PPアロイ製のエアクリーナケース
ケナフ/PPアロイ製のエアクリーナケース
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 トヨタ紡織は,植物由来材料であるケナフで造ったエアクリーナケースを「第41回東京モーターショー」(一般公開日:2009年10月24日~11月4日)で展示した。同社は従来からケナフの射出成形品の実用化に取り組んでおり,今回出品したエアクリーナは量産車種への適用を意識したもの。近い将来の実用化を目指すという。

 ケナフは,アオイ科フヨウ属の植物。この技術では,まず直径が5mmぐらいになるまでケナフを粉砕。さらにポリプロピレン(PP)の粉末などと混ぜてコンパウンドとし,そのコンパウンドから射出成形用の材料となるペレットを得る。このペレットを用いて部品の射出成形を行う。ケナフ/PPアロイの射出成形品は,PP単体の射出成形品に比べて,剛性に優れる,成形後の収縮率が小さいといった特徴がある。混合比は,ケナフが60質量%,PPが40質量%と,ケナフが「主」である。

 従来同社は,ドアインナーパネルのアッパー基材(ドアハンドルが収まる部分を含む上側の部品)でケナフ/PPアロイの射出成形に取り組んでいた。しかし,植物由来材料であるケナフは,外観の“見た目”の品質を安定させるのが難しい。そこで同社は,内装部品は実用化へのハードルが高いとみて,ユーザーの目にほとんど触れることのないエンジンルーム内に搭載する部品にターゲットを変更。もともと同社が手掛けていたエアクリーナのケースに白羽の矢を立てた。

 ケナフを射出成形材として使う場合,型内での流動性を確保するのが難しい。ケナフの成分は基本的に繊維質(主にセルロース)なので,細かく粉砕したぐらいでは型内では流動しない。そこで,前出のコンパウンドを造る段階でケナフとPPを均一に分散させ,相溶化した状態にする。それによって,PPがケナフを運ぶ媒介の役割を果たすようにすることで,PPに匹敵する流動性を確保している。