ベルギーの研究機関IMECは,活性層の厚みが10μmと非常に薄い単結晶Si太陽電池を試作し,エネルギー効率7.5%を得たと発表した。薄くてSiの使用量が少なく,それでいて効率が高い太陽電池の開発に向けた一歩といえる。

 IMECは,以前から結晶Si太陽電池を薄膜化する課題に取り組んでいる(関連記事)。従来,単結晶Si太陽電池は厚みが150μmかそれ以上で,多量のSiが必要だった。今回は薄い上に,結晶成長という手法でSi層を作製したため,削りクズがでず,Siの量を大幅に減らせるメリットがある。

 しかし,薄いだけなら,1~2μm厚のアモルファスSi太陽電池などがある。ただ,アモルファスSi太陽電池の効率は単接合の場合,6~8%が限界だ。

 今回の太陽電池は,ガラスの一部を後処理で結晶化させた「ガラス-セラミック基板」(IMEC)に,結晶Siのシード(種)層を薄く形成し,その上に単結晶Siの活性層をエピタキシャル成長させて作製した。得られた効率7.5%は,アモルファスSi太陽電池の効率をやや超えた程度だが,IMECは電極構造を少し直せば9%超も見込めるとする。さらには,「まだ,光の反射や閉じ込めといった構造の工夫は何もしていない。こうした工夫を加えれば,活性層5μ~10μm厚の結晶Si太陽電池で効率15%以上を期待できる」(IMEC)という。

 IMECは「長期的には,エピタキシャル成長が不要な方法を開発し,さらなる低コスト化につなげたい」意向。既に,多孔質Siをアニール(焼成)する方法に当たりをつけて太陽電池を試作。効率2.6%を確認しているという。