電子情報技術産業協会(JEITA)は2009年10月16日,Webサイトに「アナログチューナー非搭載DVD録画機器を私的録画補償金の対象機器とする件について」と題する文書を公開した。文化庁が2009年9月8日に著作権課長名で,「デジタル放送専用DVD録画機が,現行の著作権制度の補償金制度の対象機器となる」との旨で回答した件に関して,現時点の見解を発表したもの。また,9月7日以降にJEITAと文化庁,録画補償金を管理する私的録音録画補償金管理協会(SARVH)との間で交わされたやり取りの概要を公開している(JEITAの文書へのリンク)。

 JEITAはこの文書の中で,文化庁著作権課の一連の対応について「大変遺憾に感じている」と非難している。また,著作権課長名で行われた回答の撤回を求め,それが成されない場合は,文化庁が用意しようとしている「関係者の合意を得るための議論」への参加を拒否する姿勢をほのめかしている。

 この問題は東芝が2009年2月に発売したデジタル放送専用DVD録画機に関して,私的録画補償金の徴収協力を拒否した問題に関連する(Tech-On!関連記事1)。パナソニックも4月に発売したデジタル放送専用DVD録画機で同様の姿勢を公表しており,両社とJEITA,およびSARVHとの間で,事態打開に向けた話し合いが行われてきた。

 JEITAら機器メーカーは以前から「デジタル放送専用録画機は録画補償金の対象外」と主張しており,「現行法ではDVD録画機はすべて対象」とするSARVHら権利者側と対立してきた。そのため文化庁は,2009年5月22日付で行われたいわゆる「Blu-ray課金」のための政令改正実施にあたって,次長の高塩至氏の名前で関係各団体に施行通知「著作権法施行令等の一部改正について(通知)」を配布して,関係者の意見対立などの課題の存在を確認している(Tech-On!関連記事2)。

 JEITAが今回公開した文書によると,SARVHは文化庁に対し,9月7日にDVD録画機が補償金の対象であることを確認する照会を行った。これに対して文化庁が翌8日に著作権課長名で行った回答が,上記の施行通知などに反していると,JEITAは主張する。

 JEITAはこのやり取りに関して,9月14日付で文化庁に照会状を送付した。文化庁は9月30日に著作権課長名でJEITAに「現行法令の解釈を示したものであり、ご指摘の平成21年5月22日付け文化庁次長通知に則ったもの」などと回答したほか,10月13日にはJEITAと会合を持ち,直接説明した。だがJEITAは,文化庁の説明に納得せず,今回の文書公開に至ったとする。

 なお,この問題に関しては,10月7日付で主婦連合会(主婦連合会の声明へのリンク),同月13日付けでインターネットユーザー協会(MIAU)(MIAUの声明へのリンク)が,共に文化庁の9月8日付の回答の撤回を求める声明を発表し,要望書を消費者庁や文化庁などあてに提出している。