図1◎ひび割れや空隙の位置を鮮明に示すことができる
図1◎ひび割れや空隙の位置を鮮明に示すことができる
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図2◎弾性波トモグラフィは,軽微な早期の損傷を評価できる
図2◎弾性波トモグラフィは,軽微な早期の損傷を評価できる
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 飛島建設と京都大学,日本大学は共同で,コンクリート構造物の非破壊診断技術「3次元構造物健全性診断システム『DaCS-3D』」の高精度化に成功した。ポイントは,弾性波の減衰特性を利用した減衰トモグラフィを開発/追加した点。コンクリート構造物の健全性診断に使える。

 同診断システムはもともと,コンクリート構造物内部を弾性波の伝播速度の分布図として可視化する非破壊技術。今回新たに追加したシステムは,減衰特性を利用して減衰比の分布を可視化する「減衰トモグラフィ」である。これにより,コンクリート内部のひび割れや空隙などの位置や程度をより鮮明に把握できる。さらに,鋭敏に変化する減衰比によって,伝播速度では検知できない早期の軽微な損傷把握が可能となり,コンクリート構造物の予防保全に役立つ。

 弾性波は,ひび割れや空隙によって振幅やエネルギが大きく減衰することが知られており,これを基に,発信波形の振幅に対する受信波形の振幅の比(減衰比)を分析することで,その位置や程度をより鮮明に把握できる(図1)。明らかな損傷だけでなく,伝播速度では評価できない軽微な早期の損傷程度も評価でき,予防保全の技術(図2)として有効と同社は考えている。

 2025年には,建設後50年以上経過する老朽化橋梁などが約7万個所発生する。同診断システムは社会資本の老朽化対策として,コンクリート構造物の健全度評価/延命化対策やリニューアルを必要としている,国/地方自治体などを中心に展開していく。