ホンダは,同社の研究開発向け米国小会社Honda Research Institute USA, Inc.(HRI-US社)と,米Purdue University,米University of Louisvilleは,金属型単層カーボン・ナノチューブ(SWCNT)を最大91%という純度で選択的に合成する技術を開発したが(第一報),この結果を2009年10月2日号の学術雑誌「Science」に掲載した。

 SWCNTは,炭素原子がつくる6角形の網のつながり方でバンドギャップを持たない金属型と,バンドギャップを持ち半導体の性質を示す半導体型に分けられる。一般的な製法では,金属型と半導体型がおよそ1:2の割合で混合された状態の材料ができる。金属型SWCNTは非常に導電性が高く,電気抵抗が極めて小さい電極や配線材料として期待されている。一方,半導体型SWCNTはCNTトランジスタなどに用いられる(関連記事)。このため,金属型と半導体型を選択的に合成したり,あるいは混合材料から分離したりする技術の研究開発が盛んになっている。

 今回の開発は,製造時のプロセスを制御することで金属型SWCNTを選択的に合成する技術。具体的には,触媒となる鉄(Fe)の粉末をSiO2/Siの基板の上に敷き,その上でCH4をH2OやH2をわずかに含むHeまたはAr雰囲気中で860℃に加熱する。この際の,H2O,H2,Ar,Heの混合割合や,加熱時間を変えることで,SWCNT材料中の金属型SWCNTの割合を18%から91%まで連続的に制御できるようになったという。ホンダ自身も,「将来の実用化に向けて,CNTの構造を完全に制御するという究極の目標に向かって、研究を続けていくことになる」(発表資料)としている。

 ちなみに,金属型と半導体型の混合材料から両者を分離する技術では,産業技術総合研究所が,ゲル化した後に凍結して解凍し,絞るだけ,といった非常に簡便で大量生産可能な方法を2009年3月に発表している(発表資料)。