4インチ・ウエハーに形成した今回の太陽電池(写真:Fraunhofer研)
4インチ・ウエハーに形成した今回の太陽電池(写真:Fraunhofer研)
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 ドイツFraunhofer Institute for Solar Energy Systems(ISE)は,n型半導体を基板とし,その上に薄いp型半導体層を形成した単結晶Si太陽電池で,エネルギー変換効率23.4%を確認したと発表した。セル面積は2cm角である。Fraunhofer ISEは量産も可能としており,三洋電機などがけん引する結晶Si系太陽電池の高効率化競争に名乗りを上げた格好だ(関連記事)。

 n型半導体を基板とする構造の結晶Si系太陽電池は,p型を基板とする構造に比べて不純物への耐性が大きく,理論的にはエネルギー変換効率を上げやすい。ところが,これまでの多くの結晶Si系太陽電池では,p型を基板とする構造のものがほとんどだった。具体的には,厚いp型半導体の上に非常に薄いn型半導体層を形成していたのである。

 理由の一つは封止層材料にある。Fraunhofer ISEによれば,封止層材料として一般的なSiO2やSiNxは,p型半導体に対してはその封止機能が十分に機能しない。このため,多くの結晶Si系太陽電池で,p型半導体を基板とし,その上に形成したn型半導体薄膜にSiO2やSiNx層が重なる構造を採っていた。

 今回,Fraunhofer ISEは,太陽光が当たる表側の封止層材料として酸化アルミニウム(Al2O3)を選んだ。これによって封止機能の問題が解消し,n型半導体を基板とする構造を採れるようになったという。

 ちなみに,結晶Si系太陽電池でのセル変換効率の最高値は,オーストラリアUniversity of New South Wales(UNSW)のProfessor Martin Green氏の研究グループが開発した独自構造のセルの25%である(従来の値24.7%が2008年10月に計算を見直したことで修正されたもの)。ただし,この構造のセルは量産が難しいと見られている。