図◎レアメタルの使用量を抑えながら,被削性や靭性を高めた冷間金型鋼「DCLT」。
図◎レアメタルの使用量を抑えながら,被削性や靭性を高めた冷間金型鋼「DCLT」。
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 大同特殊鋼は,レアメタルの使用量が少ない順送プレス型向け冷間金型鋼「DCLT(ディーシーライト)」を2009年10月から販売する(図)。汎用の冷間金型鋼SKD11(JIS鋼)と同等の硬さを維持しながら,モリブデンやバナジウムの使用量を約7割削減したのが特徴だ。

 金型の素材となる工具鋼では一般に,レアメタルを多く添加することで用途に応じた特性を調整している。だが,世界的な需要の高まりからレアメタルの価格が高騰しており,その影響を受けにくい冷間金型鋼のニーズが高まっているという。そこで同社は,2008年10月に発売した冷間金型鋼「DCMX」(Tech-On!関連記事)の開発で培った技術を生かし,新しい金型鋼を開発した。

 新しい金型鋼では,レアメタルの使用量を減らす一方で,靭性(じんせい)をSKD11の2倍に,被削性を3倍に高めている。SKD11と同じ条件(1030℃ガス冷却焼き入れ)での焼き入れが可能だ。

 同金型鋼を使うことで,素材の購入コストを抑えられる上,加工能率を向上できる。加えて,割れたり欠けたりしにくいので,金型の寿命も延ばせる。ただし,大きさは厚さ53×幅405mm以下に限られる。また,高温での焼き戻しでは,十分な硬さを得られない場合もあるという。