NTTドコモ傘下の米DOCOMO Capital, Inc.は,米ベンチャー企業Evernote Corp.に200万米ドルを投資したと発表した(発表資料)。Evernote社は,携帯電話機やパソコンで ユーザーが撮影した写真や選択されたWeb情報などを分析・蓄積するWebサービスである。同社のサービスは文書や画像認識技術を採用している。この技術の一部は米Apple Inc.の「Newton」と呼ぶ初期PDA製品の手書きテキスト認識の開発に係わった開発者が担当しているという。
Evernote社のWebサービスの基本狙いは,ユーザーの記憶を支えるWebサービスを提供する。このため,同社はユーザーが撮影した写真や選択したWeb情報,音声メモなどを保存するクライアントとサーバーの技術に依存する技術を開発した。例えば,ユーザーが会議に参加して,ホワイトボードに書いたノートを携帯電話機で撮影する。携帯電話に搭載されたアプリケーションで,この写真をEvernote社のサーバーに転送する。サーバーに届いたら,同写真を分析して,テキスト情報を出力する。こうした情報を後にユーザーが検索ができるためにサーバーに蓄積したり,パソコンのクライアントにも同期を行う。ユーザーが自分の情報をWebサイト及び携帯電話機/パソコンのクライアント・ソフトウエアから検索ができる。「我々は(有名のコンピュータ学者の)Vanover Bush氏やGordon Bell氏が目指す人間記憶に助かる『外側の脳みそ』を実現しようとしている」(Evernote社,CEOのPhil Libin氏)。Evernote社のサービスは無料と有料のバージョンがある。
Libin氏によると,Evernote社のテキスト・画像認識技術は自社で開発した技術と他社からライセンスされた技術を混ぜて採用している。例えば,ユーザーが記録する希望の名刺を撮影したら,その名刺は読みにくいアングルに撮影されている可能性があるという。「こうした写真からテキストを区別して,テキストとして認識するのは単純ではない」(同氏)。クライアント側とサーバー側で情報を同期する技術も,同社がかなりのリソースも掛けているという。既にEvernote社は複数の特許を保有している。
日本の市場参加やAV機器との連携も検討中
Evernote社はこのサービスを2008年6月に公開した。現在は100万人以上のユーザーが利用しているという。日本語版はまだ存在しないのに,米国に次いで2番目にユーザーが多いという。「日本はアクティブユーザーが特に多い市場」(Libin氏)。
NTTドコモからの資金は,日本語を含めてEvernoteが対応する言語のローカライズや対応する携帯電話機を増やす目的などに利用する。Libin氏によるとAV機器でユーザーが楽しんだコンテンツを記録するといった他の端末に対応する用途も検討している。従って,今回の投資はこうしたプラットフォーム展開に回す可能性もある。