2009年9月4日から9日にかけて,ドイツのベルリンでデジタル家電の国際展示会「IFA2009」が開催されている。展示会に先駆けて行われたプレス・カンファレンスと見本市会場における各社の展示からは,2010年および次世代に向けての各社の製品戦略が見て取れる。特にテレビに関しては,3Dテレビ(3次元映像対応テレビ)とLEDテレビ(LEDバックライトを光源とした液晶テレビ),多機能テレビ(IPTV,Connectivity TV)などに各社の訴求点が集中している。

ソニーの展示
ソニーのアクティブ方式3Dテレビの展示
視聴風景(上)とシャッタ方式メガネ(下)

 3Dテレビに対する取り組みは昨年あたりから本格化しているが,今回は主要テレビ・メーカー各社による“量産をにらんだ展示”が盛んである。ソニーとパナソニックは2010年に3Dテレビ発売する方針を示している。韓国ではSamsung Electronics Co., Ltd.が既に3Dプラズマ・テレビを発売しており,LG Electronics Inc.も3D液晶テレビを韓国市場に向けて2009年内に投入するとみられる。

 しかし,3Dテレビを取り巻く環境は,一本化されていると言い難い状況にある。ソニーとオランダRoyal Philips Electronics社が液晶テレビ,パナソニックがプラズマ・テレビ,Samsung ElectronicsとLG Electronicsは液晶とプラズマの両方で3Dテレビを展示しており,ディスプレイ・デバイスの選択では各社の思惑が入り乱れている。また,3Dの方式も,ソニーの液晶テレビ,パナソニック,Samsung Electronics,LG Electronicsのプラズマ・テレビなどが「アクティブ・シャッタ方式メガネ+フィールド・シーケンシャル方式ディスプレイ」(以降「アクティブ方式」と表記)であったのに対し,LG ElectronicsやPhilips,日本ビクターなどの液晶テレビは「偏光方式メガネ+偏光フィルタ」を張り付けたディスプレイ(以降「パッシブ方式」と表記)であるなど,採用方式が分かれている。

まずは“3D Readyテレビ”を2010年に投入

 今後の3D方式の選択を大きく左右するのが,“3D Readyテレビ”というコンセプトである。

ソニーの展示
ソニーの3Dテレビとメガネ

 3Dテレビの一つの問題が,コンテンツである。衛星放送などで3Dプログラムの放送が具体的に検討されているが,家庭用テレビとして視聴するにはコンテンツのサービス体制が整っているとは言い難い環境にある。2010年時点では3D対応の放送波はほとんどなく,3D対応のBlu-ray Discプレーヤや高機能ゲーム機などパッケージ・メディアが3Dコンテンツの主体となる。これらの3D対応機器(Blu-ray Discプレーヤや高機能ゲーム機)をパッケージでそろえれば3Dテレビとして機能するが,肝心の放送波は来ていない。

 この段階でテレビ・メーカーは3Dテレビを見切り発車するために,“Readyテレビ”というコンセプトを取る。パッケージ・メディア(DVDやゲーム・ソフトなど)など一部のソースで3Dコンテンツが存在するものの,テレビ視聴の前提である放送波の信号で3Dプログラムが来ていない段階で,将来に備えて“Ready(準備された)テレビ”を販売する,というコンセプトである。欧州では,数年前にHD(high definition)プログラムの放送波が少ない中,“HD Readyテレビ”というコンセプトでHDテレビが先行的に普及した。概念的には同様のコンセプトと考えて良い。