TTドコモ サービス&ソリューション開発部 主査の忍頂寺毅氏
TTドコモ サービス&ソリューション開発部 主査の忍頂寺毅氏
[画像のクリックで拡大表示]
「直感検索・ナビ」のサービス・コンセプト(発表資料から)
「直感検索・ナビ」のサービス・コンセプト(発表資料から)
[画像のクリックで拡大表示]

 携帯電話機のカメラを起動して風景にかざすだけで,店舗や施設などの情報がアイコンで表示される──NTTドコモが開発した,拡張現実(AR)技術の応用アプリケーション「直感検索・ナビ」である。試験サービスとして,同社のAndroid搭載端末「HT-03A」のユーザー向けに1000本限定でダウンロード提供を行ったところ,1週間で限定本数に達したという。

 直感検索・ナビでは周囲の店舗や施設の情報を表示・検索できるだけでなく,検索した店舗などを目的地に設定することで,目的地までのルート案内をカメラ映像に合成表示する「直感ナビ」も可能だ。また,友達のいる方向にカメラを向けると,風船型アイコンが表示されて友達のいる位置と方向が分かる「友達レーダー」,携帯電話機を投げる(振る)動作をすると,その方向にいる相手に対してメッセージを送信できる「投げメール」もある。

 ゲーム開発者会議「CEDEC 2009」のセッションで,NTTドコモ サービス&ソリューション開発部 主査の忍頂寺毅氏は直感検索・ナビを中心とした携帯電話機の新しいアプリケーションについて,自分の位置,見ている方向,投げる方向を用いた直感的・体感的なコミュニケーション・サービスを目指したと語った。

 直感検索・ナビのユーザー・インタフェース(UI)で重要視したのは,(1)端末の姿勢や利き腕に依存しない,(2)片手でも使える,(3)アイコンを多用する,ことである。また,画面をタップしないことも考慮した。タップ動作は意外に間違いやすいからだ。こうしたポイントを踏まえて実際のUIデザインでは,円周上に並べたアイコンを回転させながら操作,周辺地情報を方向と距離でまとめて表示,端末の立て方で検索モードと地図モードを切り替える,などを実装した。

 また,「基本的な動作をタスクのコントロールに使えないか」と考えた結果が,投げメールのUIになったという。忍頂寺氏は,「投げメールでは情報がどう届くかにあえて不確実性を持たせ,不便を楽しめるコミュニケーションというチャレンジもした」と言う。

 友達レーダーのアイデアは,風船を持って歩いている自分の娘が離れたところから見付けやすいという実体験から着想したという。そのために,友達レーダーには風船型アイコンが使われているという裏話を披露した。

 システム的には,外部サーバーからコンテンツを取得してマッシュアップし,所定のAPIを通じてクライアントからの要求に結果を返す。現在商用化を目指して,機能ごとに分けていたAPIを整理・統合している段階だと言う。「モバイルとARは親和性が高い。APIをサービス・プロバイダーに提供することでARサービスの開発を促し,ARを普及させたい」(忍頂寺氏)。ただし,課金や加入者を管理する仕組みなどはまだ検討中のため,商用化の時期は未定とする。

 最後に忍頂寺氏は,今後の携帯電話機のサービスについて「見る,聞くという機能から得た情報を記録できれば必然的にライフログ(life log)になっていく。それらが集積すれば,利用者に即した知的処理手段に発展しないか」といったことを検討していると明かした。