「Clear Vu」の試作品をかけたOptinvent社CEOのKayvan MIRZA氏
「Clear Vu」の試作品をかけたOptinvent社CEOのKayvan MIRZA氏
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試作版Clear Vuの裏側。映像の重畳に必要なのは縦溝が入ったレンズ部分など。HMDの表側には,デザイン上の立場から一般のサングラスのレンズをはめている。現在はアルミニウム製のフレームも,製品版では軽いプラスチックにするという。
試作版Clear Vuの裏側。映像の重畳に必要なのは縦溝が入ったレンズ部分など。HMDの表側には,デザイン上の立場から一般のサングラスのレンズをはめている。現在はアルミニウム製のフレームも,製品版では軽いプラスチックにするという。
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 フランスのベンチャー企業Optinvent S.A.は,既存の製品より大幅に低コストで製造できるとする,メガネ型ディスプレイのHMD(head mounted display)「Clear Vu」を開発中であることを明らかにした。既に日本のあるメーカーに製造などを委託し,2010年末には発売する予定であるという。

 このディスプレイは,「光学透過型」のHMDの一種。光学透過型とは,度の付かないメガネを基にして,メガネの視界の中にマイクロディスプレイからの映像を重ね合わせる方式である。従来は,自然な視界をすべて遮って,代わりにビデオカメラの映像を見せる「ビデオ透過型」が多かった。最近はコニカミノルタ,オリンパス,ソニーなど多くのメーカーがこの光学透過型HMDを開発中である。

 Optinvent社のClear Vuの位置付けは「ポータブルな大型ディスプレイ」(同社CEOのKayvan MIRZA氏)。光学透過式を選んだ理由も,小型・軽量にしやすく,映像を見ながら周囲も見え,しかも製造コストも下げやすいからだという。「iPhoneなどビデオを見られる携帯端末と接続して,映画やテレビの鑑賞,3次元(3D)ゲーム,ナビゲーションなどを大画面で楽しめる」(同氏)という。接続する端末にGPSや地磁気センサなど位置情報を知る機能があれば,「拡張現実感(AR:augmented reality)」のモニターとしても利用可能とする。

 視界中,ビデオなどを重畳する画面の大きさを示す「水平画角」は35度。角度の上では,例えば2.5m先に71型テレビがあるのと同等になる。「開発中のものも含め,光学透過型HMDの中では最も画角が広いはず」(MIRZA氏)。

レンズ部分のコストは数米ドル

 このHMDのもう一つの特徴は,「他社より大幅に低コストで製造できること」(MIRZA氏)。Optinvent社は,光学透過型の中でも「反射式」という方式を採用している。具体的には,レンズ部分の一方の表面にノコギリ状の切り込みを入れ,その部分にアルミ蒸着と見られる反射膜を形成している。この反射膜が,マイクロディスプレイからコリメータ・レンズを介して,レンズ部分の縁に入射させた映像を目に送り込む役割を果たす。

 このレンズ部分はプラスチック製で,射出成形で量産可能であるため,「量産時には数米ドルで済む」(MIRZA氏)。HMD全体でも200米ドル以下にすることは十分可能という。

 Optinvent社は,フランスThomson SA(旧Thomson Multimedia社)が消費者向け製品事業から一時撤退した際に独立した企業。HMDの他に,薄型パネルや小型プロジェクタも開発中とする。