開発したレーザ素子の模式図(左)と,電子顕微鏡写真(右)。写真:Xiang Zhang Lab, UC Berkeley
開発したレーザ素子の模式図(左)と,電子顕微鏡写真(右)。写真:Xiang Zhang Lab, UC Berkeley
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 米University of California(UC),Berkeley校は世界最小の半導体レーザを開発した。表面プラズモンという電子と光が金属表面上で結合する現象を利用し,発光部の大きさを発振波長の1/20以下に抑えこんだとする。光通信の通信容量の大幅な拡大や,電子回路の光化につながる技術という。詳細は,2009年8月30日付けの「Nature」に論文が掲載された。

 開発したのは,UC Berkeley校,Mechanical EngineeringのProfessor,Xiang Zhang氏の研究グループ。具体的には,銀(Ag)の薄膜上に厚さ5nmの絶縁層を介して直径約100nmの太さの硫化カドミウム(CdS)のナノワイヤを載せた素子を作製した。これに励起光を照射すると,Agの層とナノワイヤの間で表面プラズモンが発生し,レーザとして発振するという。発光部の寸法は,発光波長の約1/20と小さい。

 これまで,発光する素子の寸法は,一般的には光の波長の1/2ぐらいにするのが限界とされている。ただし,表面プラズモンが起こる場合,素子の大きさに対する制限が小さくなることが分かっており,多くの研究者がこの現象を利用したレーザ素子の小型化に取り組んでいる。ところが,電気抵抗などの影響で,表面プラズモンは発生してもすぐに散逸してしまう課題があった。

 今回,Zhang氏のグループは,ナノワイヤとAgシートの間の5nm厚の絶縁層に光のエネルギーを溜め込むことでこの散逸を低減し,レーザ発振に必要な誘導放出を起こさせた。それだけでなく,励起光の6倍まで光を増幅することにも成功したという。