山梨大学燃料電池ナノ材料研究センターの外観
山梨大学燃料電池ナノ材料研究センターの外観
[画像のクリックで拡大表示]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と山梨大学,山梨県は,固体高分子形燃料電池の中核的な研究開発拠点となる「山梨大学燃料電池ナノ材料研究センター」を設立し,本格稼働を開始すると2009年8月19日に発表した。

 NEDOが推進する「燃料電池・水素技術開発プロジェクト」の中の「固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発/劣化機構解析とナノテクノロジーを融合した高性能セルの基礎的材料研究(HiPer‐FCプロジェクト)」の共同研究の拠点となる。NEDOでは,2015年に一般ユーザーへの販売を開始し,2020年からの普及を目指す燃料電池車に向けて安価で耐久性が高い燃料電池スタックの基礎技術となる材料開発をHiPer‐FCプロジェクトで担いたいとしている。

 HiPer‐FCプロジェクトは,山梨大学やカネカ,東レリサーチセンター,富士電機アドバンストテクノロジー,田中貴金属工業,島津製作所,パナソニック,早稲田大学,東京大学が委託先となり,2008年度から2014年度まで実施する予定。7年間での予算は最大90億円を見込む。最終目標は,-30℃で起動し,最高100℃で30%の相対湿度で作動可能なMEAを開発すること。燃料電池車向けのセルとしては,電極触媒の白金使用量を現状の1/10に削減するとともに,定格の25%運転で64%(LHV)の車両効率を,耐久性は5000時間作動と6万回の起動/停止を見通せるものにするという。

 山梨大学ナノ材料研究センターは,2009年8月25日に開所式を催す予定。同所には,30名ほどの国内や海外からの大学研究者を結集するほか,企業が研究者を派遣する計画である。実験棟は,クリーンルームで,計測のために防振,磁気漏洩シールドを施した実験室があるほか,世界最高性能の透過電子顕微鏡やX線光電子分光装置,核磁気共鳴(NMR)装置を設置している。