最近のテレビでは,「アクトビラ対応」などのインターネット・サービスを利用する機能を備えている製品が当たり前になっている。こうしたテレビのインターネット接続機能の共通仕様を定めているのが「デジタルテレビ情報化研究会」である。同研究会ではテレビ用のWebブラウザーの共通仕様や,対応コンテンツの制作ガイドラインなどを策定している。

 そのデジタルテレビ情報化研究会が2009年度に進めている作業の一つが,デジタル・テレビに向けた「Ajax記述ガイドライン」の策定である。2010年3月末までに完成させる計画だ。5月14日に総会で承認を得て,6月中旬に組織化をした段階で,これからワーキンググループを開催して議論を進めていく。

 デジタル・テレビ向けAjaxの機能そのものは,2007年度に仕様を策定済みである。「画面の一部を書き換えて,動きのあるユーザー・インタフェースを作るために仕様として取り入れた」(同研究会 事務局運営委員長の大隅慶明氏)。このため2008年度中に公開された「コンテンツガイドライン」でもAjax関連の機能について触れている。しかしそれはわずか1ページの記述だけで,事実上「コンテンツを動的に書き換える場合にはDOM APIを使うべき」と書いてあるだけだった。「技術者は仕様書だけでも十分理解できるが,サービスなどの企画立案をしている人にはなかなか伝わらない。また実際にコンテンツを作る際に,メモリの制約など,どこまで使えるかが分からないとコンテンツ開発者が困ってしまう」(大隅氏)。

 こうした課題の解決を目指し,Ajaxの記述ガイドラインを策定する。テレビはパソコンと異なり,どこまで使えるかなどは,メーカーや品種で異なるかの差異があり,「やってみないと分からない部分がある。それを見極めるために,実際にコンテンツを書いた上で限界を見極める」(同研究会 技術仕様検討WGの松村浩一氏)。具体的には前述のメモリの制約など,テレビ向けの限界値などをガイドラインに記述する。ただ単にガイドラインの文書を記述するだけでなく,その仕様に準拠しているかどうかの検証までを会員企業に依頼する。ただし情報化研究会は標準化団体ではないので,テスト・ケースなどまで作成することは難しいという。「むしろ上限値が決まっていることが大事。それ以下なら表示できるはずという枠組みを提示することによって,コンテンツ事業者は安心してコンテンツを書けるし,仮に挙動の違いがあっても切り分けがしやすくなる」(松村氏)。